「踏ん張っていて良かったな」と思うことは必ずくる
――完成作を観て、特に笑ったシーンは?
小四郎とさよが悪者たちに追いかけられて、結局、橋の上で追い詰められるというシーンがあるんですけど、そのとき、悪者がナイフをなめるんです。普通、ナイフをなめるなんてしないじゃなですか。だから僕の中でどうしてもスルーできなかったんです。
そこにアドリブで「ナイフなめてる!初めて見た!」ってツッコミを入れました。それが本編に活かされていたのはうれしかったです。現場で言ったときも面白かったし、観たときも面白かったので、スルーしないで言えて良かったです。
ナイフをなめるというのは監督の演出でもあったんですけど、僕らは「ベタ過ぎないか?」って思っていて、そこに対しての僕らの芝居を通してのツッコミを、監督が受け取って活かしてくれました。シーンとしてのテンポも良かったし、僕は好きです(笑)。
そうやって全体を通して、僕が監督にツッコミを入れつつ楽しく進んでいけたので、マイナスな感情を持つことなくできました。そこがまた映画として苦労を楽しく乗り越えていってるように見えるのかなと。絶望をちゃんと面白おかしく描けていると思いました。
――前田哲監督は本作を通して若者にエールを送りたいとコメントされていますが、神木さんが本作を通して若者に伝えたいことはありますか。
この作品に関して、僕はこういうふうに感じてほしいとか、こういうメッセージがありますとか、そういうものは特にないとは思っていて。ただ監督のおっしゃるように、若者に対しては「まあ、何とかなる」ということを伝えられたらいいなと思います。困ったことや大変なことはありますけど、何とかなるから安心してほしいと。
「止まない雨はない」、雨が降ったあとには必ず晴れるという言葉もありますけど、今は米津玄師さんじゃないですけど(「KICK BACK」<「止まない雨はない」より先に その傘をくれよ>)、雨の降っているこの瞬間に傘をさしてほしいという、それもそうなんだよなって思うんです。
頑張ったからと言って報われないことも多いですし、叶えられない夢もあると思うんです。ただ、だからと言って、僕はその努力は無駄にはならないと思うんです。本人は「無駄だった」と思うかもしれませんけど、その努力の中で得た体験や経験は、その人にしか感じられない貴重なものだと思います。
息苦しいと感じることがあったり、いろいろ生きづらい世の中だとは思うし、若者は特にそう感じるんだとは思います。でも、今を精一杯頑張って、何とか踏ん張ることができたら、何かその先に「踏ん張っていて良かったな」と思うことは必ずくると思います。
描いていた夢とは違っても、「踏ん張っていて良かったな」という景色は見れると思うので、そこまでちょっと耐えてみようなかと思ってくれたらいいなとはすごく思います。耐えて良かったと思える将来は必ず来るんじゃないかと。
こんなことを人には言ってはいますけど、一番はそれをちゃんと自分でも感じないといけないということで。人に言いつつ、自分に言い聞かせているような感じです(苦笑)。