桜田通とは「手に取るようにお互いのことをわかっていた」

撮影/YOSHIHITO KOBA(Sketch)

――佐藤浩市さんが演じた一狐斎は、小四郎の実の父親でありながら、小四郎を上手く誘導して借金100億を背負わせる元藩主という役どころです。小四郎にとっては一筋縄ではいかない存在です。

(一狐斎を)疑う場面もあれば、「あなたの言うことは聞きません」「絶対に借金返済を成し遂げてみせます」という場面もあり、疑いから始まって敵対していく関係性なので、そこの流れはちゃんとできればと思っていました。

最初はただただ恐縮していた小四郎が、いろんな人と出会っていろんな経験をしていく中で、ちゃんと正面から(一狐斎と)向き合える度胸がついたことが表現できたらいいなと。

最終的な二人の関係性については、監督の指示もあって大げさに表現する部分もありましたけど、それをアクセントにしつつ受け入れている感じが出ればいいなと思っていました。

©2023映画『大名倒産』製作委員会

――佐藤浩市さんの持つ存在感が、二人の最終的な展開にも説得力を持たせたように感じました。

浩市さんは本当に存在感が強い方ですよね。(一狐斎は)いきなり「父親です」と言って現れた人で、それまでの関係性がない人だったから敵対することができたのかなとは思うんですけど、最終的な流れまでは浩市さんもすごく悩まれていました。

最後に小四郎が育ての親である小日向(文世)さんが演じている作兵衛と、本当の父親である一狐斎に対しての想いを言葉にする場面があるんですけど、浩市さんはそこまでに何をしたらそういうふうに小四郎に言ってもらえるかを考えられていました。僕もその最終的な想いにいつ小四郎は変換できたんだろう?とは感じました。

でも実際に現場でやってみると、そこまで浩市さんとお芝居をしてきた僕自身の想いも含まれていたのかも知れないですが、自分の中ではすごく腑に落ちてその言葉を言えたんです。それは良かったなと思います。

きっと浩市さんの存在感であったり、お芝居での立振る舞いであったり、一緒に作品を作っていくなかで生まれた感情も大きかったのかなと思いました。そこは台本を読んだ時点で感じたことと、現場で芝居をして感じたことが、いい意味で違って良かったなと思いました。

©2023映画『大名倒産』製作委員会

――プライベートでも交流がある、小四郎の兄・喜三郎役の桜田通さんとの共演の感想も聞かせてください。

ついに時代が桜田に追いついてきましたね(笑)。彼とは以前の所属事務所のときから仲良くさせてもらっていて、彼のことはよくわかっているし、彼も僕のことをよくわかっているから共演は照れくさい部分もありました。

でも今回は小四郎にとってこれまで会ったことのない兄弟だけど、ちゃんと兄弟にも見えなくちゃいけないという関係性だったので、そこは通で良かったなと。お芝居をしていても息がぴったり合っていましたし、手に取るようにお互いのことをわかっていたので。そして、もう1回言いますけど、時代が桜田に追いついたなって思いました(笑)。

――(笑)。共演が決まったときはどんなやり取りをしましたか。

僕が「お前か」って言ったら、「お前が主演か」って返ってきました(笑)。「おいおい、どんな運命だよ」「何だかんだ運命なんだな、ここは」って言いつつ、「よろしく~」みたいな感じでした。

――二人で役作りについて話すなんてことはないですよね?

そうですね、そこはしなかったです。桜田は桜田でぶちかませる人なので、そこは彼がどんなふうに作ってくるのかを逆にすごく楽しみにしていました。だから僕は何も考えずに桜田がその場でやったことを受け止めて、そのまま返そうと。お互いにサプライズ感があって、やっていて楽しかったです。