10代、20代の新しい子たちのフォローができるような器があればいいな
――小四郎のことを「相手に寄り添うことができる人」とおっしゃいましたが、神木さんにも同じような印象があります。考え方の違う人と上手くコミュニケーションを取るための自分なりの方法はありますか。
僕は「人は人、自分は自分」と思っているので、「これは普通でしょう」「これは常識でしょう」ってことがあまり好きではなくて。それは「あなたにとっての普通でしょう」って思ってしまうんです。自分の常識を一般的なこととして相手に押し付けたくはないです。
明らかに間違っていることとかは別ですけど、例えばお金の使い方とかであれば、その人にはその人らしいやり方があるんだろうと思います。人の話を聞いて、「確かに自分は無駄遣いをしていたかも」と思って気を付けることもあるけど、それは自分がそう思うからで。僕は相手を否定することはないので、波風はあまり立たないです。
――意見がぶつかったときは?
そのときは、相手の理由を聞いて「確かに」と思えたら相手の意見になりますし、自分の意見を言って相手が納得をしてくれたら自分の意見になりますし、どちらにも譲れない部分があるのなら、間を取ってできるだけWIN-WINになれたら平和だなって思います。
妥協点を作ればいいので、僕の中でけんかをすることはかなりいろんなことをすっ飛ばしてるんじゃないかと思います。カッとなると判断力が欠けるとも思うし、ぶつかったことが問題であれば、それをお互いに平和に「それでいいじゃん」って言える形で解決できるところを僕は探したいタイプです。
――本作は神木さんにとって30代最初の公開作となります。20代の神木さんはいろんなことを試してみている印象がありましたが、30代はその経験を踏まえて上手く使えるようになる年代かとも思います。そういう意味で30代に期待することはありますか。
やってみたいことは今のところあまり思い付いてはいないんですけど、「面白そうだな」とか「こういうのはみんなやったことないんじゃないかな」ということは探していきたいとは思います。
ただ30代になると、そこまで大きく変わることとか、大きな挑戦や賭けみたいなことはないんだろうなとも思います。20代だからこそできたと思うこともありますし。だからおっしゃられたようにここまでで経験したことを、どうやって応用して活かしていくかってことが主にはなってくるんじゃないかとは思います。
それこそ大好きな仲間とか、友達の役者さんとかと一緒に笑いながら、楽しみながら作品を作るのもいいなとか。自分たちが楽しむだけになっちゃうかもしれないですけど(笑)。あとは10代、20代の新しい子たちのフォローができるような器があればいいなと思います。
――20代にうちに試しておいて良かったと思うことは?
いろいろありますね。『るろ剣(るろうに剣心)』でアクションをやれたこととか、『神さまの言うとおり』みたいな奇抜な役とか、はたまた『3月のライオン』のようにおとなしい役とか、『刑事ゆがみ』もそうだし、それまで全くやったことないタイプの役に挑戦できたのは良かったです。
その役がハマるかハマらないかはやってみないとわかないので、その心持ちで突っ込んでいけたのは良かったと思います。例えば、これからは入社1年目みたいな役はできないと思うんですけど、そういう人の先輩役をやったときに、今までやってきた経験が活かされたらいいなと思います。
――出演する作品に対してメッセージ性を求めることはありますか。
そこに関してはこれまでもあまり気にしていなかったんですけど、これからも今まで通り気にしないでいくのかなとは思います。僕が役の感情を表現することができれば、それが観てくださった方には伝わると思いますし、その受け取り方はそれぞれでいいと思うんです。
僕らが「こう思ってほしい」と考えたとしても、こういうものは一人ひとり価値観も違うので。僕としてはどんな形でもいいので楽しんでもらえたらそれでいいです。
――近年には『みやぎから、』『かみきこうち』などの地域の魅力を紹介するような書籍の出版や、謎解きイベントのプロデュースなど、俳優とはまた違ったパーソナルを活かしたお仕事もされています。こういう動きも続けていきますか。
僕で何かご協力できることがあればやっていきたいとは思っています。それも挑戦の一つなので。宮城も高知も、地元じゃないからこそ、その土地の良さに気づけた部分があると思うんです。
そういう外からの目線を持って取材をしたり、表現したりして伝えられることがあるのはすごくいいなと思ったので、タイミングを見つつですけど、今後も何かあればやってみたいなとは思っています。
*
ファンの間では仲が良いことが知られている神木さんと桜田通さん。二人のやり取りは兄弟役ということもあり息もピッタリ。絶妙な間合いを見せてくれています。
そんな桜田さんはもちろんのこと、これだけの個性豊かで豪華な共演者に対しても、自身のキャラクターをブレさせずに、相手にも合わせられるのはさすがの一言。神木さんにしか演じられないと感じさせる小四郎の奮闘ぶりをぜひ劇場でお楽しみください。
ヘアメイク/MIZUHO[VITAMINS] スタイリング/カワサキ タカフミ
作品紹介
映画『大名倒産』
2023年6月23日(金)より全国公開