お互いを知るコミュニケーションが楽しかった

撮影/友野雄

海外作品ゆえに、現場では英語が主体となる。10カ国以上から参加した共演者たちとは、どのようにコミュニケーションを取っていたのだろうか。

「みなさん、いろいろな国から来ていました。スペイン人も、フランス人も、スウェーデン人も、イギリス人も、それぞれ何人かいて。でも、ひとりで来たのは、日本人の僕だけでした。みんな母国語で話す相手がいて、もちろん英語で話せる人もいますが、日本語が話せる人がいなくて、とくに最初の1カ月は孤独に感じることもありました。

ただ、2カ月目に入りマドリードで撮影するようになった頃から、状況は変化していって。だんだんお互いの人柄がわかってくるので、よく会う人もいれば、たまにみんなでも会うといった感じで、少しずつチームができていきました」

孤独を耐えた先に待っていたのは、言葉の壁を超えた心の触れ合いだった。日本語が話せない共演者とは、工夫をしながら、心の距離を縮めていったようだ。

「英語がネイティブの方もいれば、そうではない方もいて、僕は後者のキャストと仲良くなることが多かったように思います。たとえば、ルノー船長役のティリエ・ゴダールさんはフランス人で、英語が得意ではないと言っていて、お互いに翻訳アプリを使いがら会話したり。この方は、渡部篤郎さんとフランスの舞台で共演したことがあるそうで、日本にも奥様と来たことあると聞いて。僕もパリ行ったことあるという話をするなど、たどたどしいながらもお互いを知ろうとするコミュニケーションを取ること自体が楽しかったです」