中央アジアの雰囲気を活かした音楽やダンス、歌

音楽劇『精霊の守り人』より、バルサ役の梅田彩佳 撮影/曳野若菜

さらに、開幕直前の取材でキャストが口にしていたように、音楽やダンス、歌も中央アジアの雰囲気を活かしつつ、非常に魅力的なものとなっていた。

音楽劇『精霊の守り人』より、バルサ役の明日海りお 撮影/曳野若菜

舞台装置は、紗幕に描かれた山地や異世界の光景が幻想的な美しさ。呪術や水の表現など布を使った演出も、舞台ではスタンダードなものだが、十二分に効果を発揮していた。

なかでも秀逸なのは、静止画の風景の中で鳥だけが動きを見せ、鳴き声を聞かせていたこと。これが物語を表現する上で、ある種の要となっていたのではないだろうか。

音楽劇『精霊の守り人』より、帝役:唐橋充 撮影/曳野若菜

そうした舞台を形作るすべての要素が、上橋菜穂子による原作『精霊の守り人』を忠実に、そしてリスペクトを込めて表現している。

原作が好きで、あるいは多少なりとも興味があって訪れた観客にとって、こんなに嬉しいことはないだろう。

幅広い層に愛されている原作だからこそ、ファミリー向けのフェスティバル公演と一般をも対象とする特別公演の2パターン※で上演されることにも納得がいく。