普段から“川村壱馬”を演じていると言われたら、それも否定はできない

撮影/小嶋文子

――それぞれ演じたキャラクターの印象を伺いたいのですが、中川監督はキャラクター作りに於いて「それぞれのパブリックイメージをちょっとだけ逆のほうに振ってみた」とコメントされていました。

川村:だから自分と近いところもありつつ、違うところもありつつという感じでした。違うところで言うと、飲み物を飲むときに音を立てるとか。自分だと抵抗があるけど、刹那ならやるんだろうなって。

それでいて刹那は繊細でもあり、深いところに闇のようなものを抱えていて、ただそれをあまり表には出さないようにもしている。仕事としてラフに会話をしているときと、自分の想いを話すときでは、その絶妙な雑さと繊細さの差も意識していました。

あとは、人の話をちゃんと聞ける人でもあって。(刹那の一夜限りの恋人となる)灯(穂志もえか)と出会って、音を立てて飲むことを指摘されたあとは、ちゃんとやめるんです。そういう細かいところは言い出したらキリがないくらいいろいろ考えながら演じていました。

©2023 HI-AX「MY (K)NIGHT」

――刹那が母親への想いを灯に語る場面のセリフは壱馬さんが考えたそうですね。

川村:あくまで刹那のフィルターを通しての灯さんへの言葉ですけど、引き出しとしてはすべて自分の言葉ではです。憤りや悔しさに対する言葉は自分の中にあったものを刹那だったどう伝えるかを考えました。

こんなふうに言うと勘違いをする方もいるかもしれないけど、僕自身は親とは仲がいいので、そういう側面を出してみたというか。

あとは逆に「子どもの幸せを願わない親はいない」ということを言うんですけど、そこは世の中を見ればそうではない事実もあるわけで。

僕自身がそう思っているわけではないですが、刹那としては(灯の母親の)佳津子さん(坂井真紀)は灯さんの幸せを願っているんじゃないかと伝えたくて、その言葉を使いました。

撮影/小嶋文子

――そのようにご自身の中にあるものをリンクさせながら演じるのは難しくないですか。

川村:なんかそこは自分でもよくわからないんです。役と自分は地続きではあるし。結局“As i”というか(笑)、全部自分でもあり。

RIKU:それは北人の(笑)(※吉野の写真集のタイトルが『As i』)

吉野:宣伝、ありがとうございます(笑)。

川村:(笑)。けど、すべてが自分っていうのは本当にそうで。それに普段から“川村壱馬”を演じていると言われたら、それも否定はできないと思っていて。

僕は自分に対して山ほどコンプレックがあって、それと向き合いながら、理想の自分になりたいと思って日々を生きているから、理想の自分を演じているとも言えるんです。実際は短所だらけなので、リアルな自分ではないのかもと思ったりします。

そうするとお芝居をするときも、普段やっていることをやっているだけとも言えて。だからリンクさせながら役を演じることはそんなに難しいことではない感じです。