全部が自分ではないですけど、近いところはあります
――北人さんは刻というキャラクターをどのように捉えていましたか。
吉野:監督から「自由にやって」と言われていたので、作り込み過ぎないようにしました。自然な日常を見せるシーンも多かったので、そこはよりナチュラルにすることを意識して。
デートセラピストの刻として仕事をしているときと、さっちゃん(刻の一夜限りの恋人となる安達祐実が演じる沙都子)から求められて日常を見せるところとでは差がでるようにしていました。
――日常の場面の刻は北人さん自身とも近いのでしょうか。
吉野:あくまで刻のフィルターを通しているので全部が自分ではないですけど、近いところはあります。
監督は「男らしい部分を見せたい」と言っていて。普段ステージに立っているときのキラキラとしたパブリックイメージではなく、人間味があるようなとこを見せたかったんだと思います。プライベートの僕にはキラキラは1mmもないので(苦笑)。
川村:監督は「パブリックイメージをちょっとだけ逆のほうに振ってみた」とは言ってますけど、僕らの全く違う一面を出させようとしていたわけではなくて、もともと存在しているけどあまり表に出ていないものを引き出したいという意味でおっしゃっていたと思うんです。
だから表に出している面ももちろん北人ではあるけど、普段の北人に男らしさがないということではなくて。むしろ監督は(吉野のことを)「男らしくて強い感じ」と言ってました。
――RIKUさんはイチヤをどんな人だと思っていましたか。
RIKU:イチヤは自分自身に嘘をつき続けた結果、人に対して心を開くことが難しくなってしまった人。かわいく言えば、素直になれなくなってしまった人です。
写真家を目指していたけど「無理なんだ」って諦めて、周りにも「もうやめた」と言いながら、実は諦めきれていない。意地っ張りで嘘つきなところがあります。
僕も学生時代はサッカー選手を目指していて、日の丸を背負いたいと思っていたんですけど、今の自分だったら「まだ早いんじゃないか?」と思うタイミングで、自分の可能性に見切りをつけてサッカーはただの趣味の球蹴りにしてしまったんです。
趣味にしてしまうと点を入れても、パスがうまく通っても、うれしくはあるんですけど、本気で目指していた頃の感覚はなくて。チームメイトと苦楽を共にしたみたいな物語も自分にはないから、そういう記憶を振り返りながらイチヤと向き合っていきました。