いかに飽きさせず、別役さんのメッセージまで辿り着けるか

撮影/藤田亜弓

――演出を手がけるのは気鋭の加藤拓也さん。堤さんとは初の顔合わせとなります。

何本か作品は拝見していますが、まだどこか謎な人ですね。だからこの戯曲に関しても、僕みたいに難しいとは思っていないのかもしれません。もしかしたら、感覚的に別役さんに近いものを感じているんじゃないかなと。それでいて笑いに振らず、淡々と描いていくのかもしれないですし。ただ役者ってズルいところがあるから、つい笑いを取りにいっちゃうと思うんですよね(笑)。

――(笑)。前出の野間口さん以外に、藤井隆さん、溝端淳平さん、小手伸也さん、高田聖子さん、中谷さとみさんと、笑いにも長けた巧者ばかりがそろっていますからね。皆さん共演経験のある方ばかりでしょうか?

お会いしたことはありますが、初共演は藤井さんだけですね。劇団☆新感線のふたり(=高田、中谷)は、名前を聞いた瞬間にもうぴったりだなと(笑)。それくらい気心知れた人が多いので、やっぱり安心は安心ですよ。初めての人ばかりだと、「こんなこと聞いてアホだと思われたらどうしよう」なんて思ったりもしますけど(笑)、このメンツならそんなこともない。自分がわからないことでも躊躇せず、いろいろ話し合って進めていけそうです。

というのも脚本を読んでいるうちに映像が見えてくる作品もありますが、これに関してはまったく見えてこないんですよね。つまり自分がしゃべっていない時やなにも役割を与えられていない時、どんな居方をすればいいのか画が浮かんでこない、本当に謎だらけです。

撮影/藤田亜弓

――そんな謎だらけの作品に挑むことは、役者としては楽しいことですか? 怖いことですか?

見えてきたら楽しいだろうなと思います。ただ自分の体に馴染み過ぎてもいけないところがありそうですし、その気持ち悪さの中で立たなければいけないこともきっとあるはず。まぁまだその段階にも立てていませんが、なんとかいいものにはしたいですね。なかなか序盤だけでは見えにくいですが、物語全体として捉えると、生きるってなんだろうとか、死ぬってなんだろうとか、そんな死生観にまつわる別役さんからの問いかけに気づかされる。

だからこれ、前段でお客さんに飽きられてしまったら、もうおしまいだと思うんです。と言いつつ、自分自身一回脚本を閉じてしまってはいますが……(苦笑)。いかにお客さんを飽きさせず、最後の別役さんのメッセージまで辿り着けるか。それが勝負だと思っています。

ヘアメイク/奥山信次[B.SUN] スタイリング/中川原寛[CaNN]

公演情報

『カラカラ天気と五人の紳士』

作:別役実
演出:加藤拓也

出演:堤真一、溝端淳平、藤井隆
野間口徹、小手伸也、中谷さとみ、高田聖子
徳高真奈美(ヴィオラ演奏)

【東京公演】
2024年4月6日(土)~4月26日(金)
会場:シアタートラム

【岡山公演】
2024年5月2日(木)~5月4日(土・祝)
会場:岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場

【大阪公演】
2024年5月7日(火)~5月11日(土)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

【福岡公演】
2024年5月15日(水)~5月16日(木)
会場:キャナルシティ劇場

※インタビュー本文はぴあWEBからの転載になります。