いい意味でそんなに作り込んでいなくて、リアルな感じです

撮影/稲澤朝博

――礼というキャラクターについてはどのように捉えましたか。

女性用風俗のセラピストということで、職業としてのイメージからはちょっとチャラいんじゃないかっていうのがありました。でも、礼自身はそうは見せたくないというか、人間味を持たせたいと思っていました。

その辺についてはすごく悩んで。一子自身、軽い気持ちでそこ(女性用風俗)に来ているわけではないし、僕の中では一子を包み込んであげるような、柔らかいイメージを持って演じました。僕自身もそうでしたけど、みんなが抱くような先入観を変えたいと思っていました。

――礼はスマートな立ち振る舞いで一子をリードしていきますね。

無理やり引っ張るような感じが出ないように、さっきも言った一子を優しく包んであげながら引っ張っていけるやり方をすごく考えました。強くやり過ぎると強引に見えるし、チャラい感じにもなるし、そこの駆け引きは難しい部分でした。

――今泉力哉監督は吉野さんのことを、「色気が滲み出る」とコメントされていました。

うれしいです。でも別に意識して色気を出そうとはしていませんでした。とにかく役の気持ちに寄り添うことを考えていたので、それがそんなふうに見えていたのだとしたらうれしいです。

撮影/稲澤朝博

――礼は意外ときちんとしているというか、お金を稼ぐ目的もはっきりとしていて、セラピストの仕事にもプロ意識を持っていますよね。

「(客のために)ここまでするんだ」というのは思いました。特に一子に対しては好きという感情もあったのでやってあげたんでしょうけど、礼自身の優しさも感じました。真摯に相談に乗ってあげて、いろいろと調べてあげて。むしろ、好きでもここまでできるのかなって。

立ち位置としても難しいところで、夫がいる人とそういう関係になっているわけですし。普段は大学生でもあるけど、ちゃんと大人の目線で相手のことを考えてあげられるのはすごいな、いい奴だなって思います。

――礼は一子のどこに惹かれたと思いますか。

他のお客さんとは違うところじゃないかと。他のお客さんは礼に夢中になってああいう場所に来ているけど、一子はそういう感情はなく、シンプルに自分自身の悩みと、目的があって来ているから。

きっと今までそういう人に出会ったことがなかったから惹かれた部分もあるし、いい意味で大人の女性で、礼にとっては魅力的だったんだろうなと思いました。

撮影/稲澤朝博

――今泉監督の演出はいかがでしたか。

僕は初めての経験だったんですけど、監督は何回かテイクを重ねるやり方で。4回、5回と重ねると、やる度に空気感が変わっていって、それを理解しながら、徐々につかみながらできたのはやりやすかったです。

今回、個人的に初めてのことも多かったので、1回ではつかめなくて、「もうちょっと……」みたいなこともあったから、そういうところでもすごく助かりました。監督自身もいろいろとこだわってくださって、相談しながら、アイディアをいただきながら演じることができました。

――しゃべり方や仕草がゆったりとしているところは意識的にしたところですか。

そこは普段の自分に近いです。マイペースでおっとりしてるって、よく人から言われます(苦笑)。でも、礼の寄り添ってあげるという立ち位置として、テキパキしていないほうがいいのかな?とは、思っていました。

今回はいい意味でそんなに作り込んでいなくて、リアルな感じです。監督もリアルなお芝居を求めていらっしゃると感じたので、その世界観に自分も入れるように、お芝居をし過ぎないことは心がけていました。

――礼を演じる上で参考にしたものは?

そういうものはないです。「もし自分だったらどうするだろう?」というのを考えながらやりました。正直、僕の中ではセラピストという職業にいいイメージがなかったので、他の誰かを参考にするのではなく、自分としてどうするかという感じでした。