喋らなくても大丈夫なんです

©2025『(LOVE SONG)』製作委員会

――お二人は初共演でしたが、仲が深まったきっかけなどがあったら教えてください。

森崎:特別、これをやって仲良くなりました!みたいなものはなかったです。たぶん、お互いに似ているのは、物事に対していろいろと思っていることはありながらも、周りを見て行動しているところですかね。お互いにお互いを見ていないようで見ている。

すごいなと思ったのが、現場をいつも明るく盛り上げているのに、僕が集中しているタイミングとかには近づいて来なくて、終わったら来るんですよ。

向井:たまに、(タイミングを)間違えることもありましたけどね(笑)。

森崎:でも、そういうことができるのは、相当、周りの空気を感知する電波が広いんだと思います。無神経にいろんな人に話しかけたりしているわけじゃないから。現場では、自分自身のことでやらなくちゃいけないことがたくさんあるに、その上でできているのはすごいです。僕もコウちゃんほどではないですけど周りを見ているから、それを感じました。

それから、コウちゃんを見て、たぶんこのシーンはもうちょっとこうしたいのかな?とかって思って聞いてみると、案の定、思っていることがあったりもして。そういうときは二人で話し合って、監督に話に行くこともありました。(向井が)先頭に立ってくれたりもして。いいバランスの関係性だったと思います。

向井:(森崎とは)喋らなくても大丈夫なんです。現場では大体どこにいるっていうのは把握していました。「あの辺におるな」みたいに。

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――監督に話に行ったというは、具体的にどんな場面でしたか。

森崎:カイがソウタにカイチアウ(タイ風オムレツ)を作ってくれるシーンがあって。そのシーンが、時間的にいろいろ厳しいところもあって、前後の流れはつながらないけど撮ってしまおうとなった部分があったんです。

そのとき、コウちゃんが「ウィンくん、どう思います?」と言ってきてくれて、「俺も(おかしいと)思ってて」ってなって、言いに行きました。スケジュール的にその日に撮るのは無理で、また別の日に撮ることになったんですけれど。

向井:でも、結果として撮り直して良かったよね。

森崎:絶対に良かった。

向井:演じていて気持ちよくなかったというか。カイとしてのセリフは言えるんだけど、ソウタはカイの顔を見て、あのセリフは出て来ないなと思ったんです。

森崎:ソウタのことも考えてくれたんです。ソウタとしては後ろ姿のカイだったから言えた言葉だったと思います。でも、それが俳優のエゴになってはいけないというのが、僕の中にはあって。僕ができないから無理と言ってしまうと、そこで全部が終わってしまうから。

向井:でも、あのときはそういうことではないから。愛です。いい作品にしたいという映画に対しての愛。(最初の流れでも)できないことはなかったけど、モヤモヤしたままの気持ちが人間なのでどこかに出てしまうから。それに、相談は無料なんでね(笑)。