新しい玉森の表情とは?

『パラレルワールド・ラブストーリー』5月31日(金)全国ロードショー ©2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会©東野圭吾/講談社

――作品そのものの純粋な感想も教えてください。

物語も展開もすべて知っているのに、 観ながら崇史と一緒に迷ったというのが正直な感想です。

それこそ、自分で演じたのに、あれ、これはどっちの世界だっけ? って思うこともありました(笑)。

でも実は、 僕は自分の作品を観るのが得意じゃないし、監督は撮影前に「新しい玉森の表情を引き出す」っておっしゃっていたけれど、 自分のことは自分にはよく分からないので、「どれが僕の新しい顔でした?」って監督に聞いてみたいです(笑) 。

――自分の新しい顔がどれなのか分からないにしても、 自分なりの手応えはあったと思います。ご自身の中では、 この作品で新たに挑戦したことは何だったのでしょう?

すべてが挑戦だったと思います。 自分のことは本当に自分では分からないけれど、 追い込んでもらうことでいろいろな顔を引き出していただいたと思うので、 (森監督に)早くお会いして、答え合わせをしたいです(笑)。

――撮影期間中、 その役をずっと自分の中に入れておくようなことはいままでの作品でもしていたことですか?

いままでも完全に忘れてしまうことはたぶんなかったと思います。

ただ、崇史の場合はずっと追い込まれていて、 常にイライラしているような感情を維持していなければいけなかったし、 それはキスマイの現場とは真逆のものだったので大変でした。

――ああ、なるほど。

キスマイのメンバーは、みんなワイワイ楽しくやりますからね( 笑)。

でも、その期間だけはその輪に入っちゃダメだなと思ったので、 俺だけちょっと距離を置いて。

現場に入ったときに崇史に戻れなくなるのが怖かったから、 そこは意識して役に集中していました。

撮影の間に自然にやつれていった!?

『パラレルワールド・ラブストーリー』5月31日(金)全国ロードショー ©2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会©東野圭吾/講談社

――1ヶ月半の撮影の間に自然にやつれていったみたいですね。

はい。 別に意識して痩せようとか頬をこけさせようとしたわけではないんですけど、何でですかね? 自分でも分からないけれど、 最後の方の追い込まれるところなんて、結構こけてましたね。

――作品がそうさせた?(笑)

そういうことを言ってみたいですね(笑)。

――そういうことにしておきますか?

はい(笑)。

親友とはどういう存在ですか?

――ところで、撮影前に森監督から玉森さんと染谷さんに「親友とはどういう存在ですか?」 という質問があったみたいですけど、玉森さんはそのとき、 どのように答えられたんですか?

親友はやっぱりかけがえのないものだし、 何人も作れるものではないし、 何かが通じ合っていないとそうならない大事な関係です。 そのときも、そう答えたような気がします。

その上で僕は、 親友とは喧嘩できる関係でいたいとか、 自分が思う親友に対しての感覚を話しました。あとは、 僕に実際に親友がいるのか、とか、 親友にまつわる実体験や理想を染谷さんと一緒に伝えましたね。

――玉森さんにも親友はいますよね。

はい、います。

――もう一度確認しますけど、 崇史と同じような状況に実際になったとき、 玉森さんはどういう行動をとりますか?

自分だったらですか? もう、全然引きます。

自分は(崇史みたいなことは) できないです。最初にも言ったように、根性なしなので(笑)。

玉森が失いたくないものとは?

『パラレルワールド・ラブストーリー』5月31日(金)全国ロードショー ©2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会©東野圭吾/講談社

――それでは、玉森さんが失いたくない人を挙げるとしたら、 誰になるでしょう?

ありきたりの答えになっちゃうけれど、やっぱり家族ですかね。

当たり前のように近くにいた人が突然いなくなったり、 忘れてしまうのはすごく怖いことです。 その恐怖を今回の映画で体感したので、やっぱり家族です。

――家族……だけですか? メンバーはいいですか?

メンバーも入れておきますか(笑)。いや、 メンバーもファミリーなので、大きな意味での家族です。

1ヶ月半の撮影を振り返る玉森の言葉から、 彼が生きたその時間が如何に大変で数奇なものだったのかが伝わっ てきた。

『パラレルワールド・ラブストーリー』 にはそんな戦いの痕跡がリアルに焼きつけられていて、 苦悩で顔を歪める表情など、 森監督が求めた玉森裕太の見た事のない顔がいっぱい。

この映画でそんな知られざる彼を見つめながら、 友情や愛について考えてみてはどうだろう?

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。