マタニティマーク・ベビーカー問題も! 妊婦とママと社会

――授乳マナーに続いて「マタニティマーク」のお話が出ましたが、私の友人も「不快に感じる人がいると思うと付けづらいし、付けていると気遣いの足らない“ずうずうしい女”と思われそうで、それもイヤ」と悩んでいました。

『周りを気遣うことのできる、優しい人なんですね。

プレママもね、公共の場での授乳と同じように、多様性のある社会の中では、やっぱり“そっといる”ことが大事だとは思います。

それでもマークについては付けていたほうがいいし、付けて欲しいな、とも感じています。

「席を譲って欲しくてこれ見よがしに付けてるんだろ?」と絡んでくるような人は、その行為自体がマナー違反としても、例えば不妊治療をしている人によっては、辛いと感じる人もたしかにいるかもしれません。

でも、妊娠している時って何が起こるか分からないんですよね。外出先で突然倒れでもしたら「妊娠中」かどうかで措置も変わってきますから、ママと赤ちゃんの命にも関わります。これは“ずうずうしい”とは別次元の問題。その点は広く、理解を求めたいところです。

それに時々「この人に席を譲ってもいいのかな?このお腹には赤ちゃんがいるのかしら、それとも???」と迷うことがあります。妊婦さんに席を譲りたいという気持ちを持っている人たちにとっては、マークで見せてくれたほうが無駄にモヤモヤしなくて済むんですよ(笑)。

多様な社会の中にはそんな人たちがいることも、知っておいてもらいたいなぁ。』


――同じくマナー問題で取り上げられる「ベビーカー」についてはどうでしょう?

『いまでこそベビーカーを畳まずに電車やバスに乗れるようになりましたが、以前の「ベビーカー禁止」だった頃のマナーを信じている人たちも少なからずいて、残念ながらまだまだ、現在のマナーが浸透していない感じはありますね。』


――私は腰痛気味ということもあって、ベビーカーでの移動がどうしても多くなります。我が家は双子なのでサイズも大きく、横幅は車いすとほぼ同じくらいなのですが、通れないような場所もちょくちょくあり……
そんな時には人の手を借りざるを得ず、“目立たず”に“そっといる”だけでは済まされないのですが。。。

『あらあら!そんな時にはもちろん、助けを借りていいんですよ!

立っている者は、夫でも、家族でも、親戚でも、そこを通り掛かっただけの人だって、使っちゃっていいんです!(笑)

これは双子のママに限ったことではもちろんありません。ベビーカーを押してみて初めて気付くような段差や、エレベーターがないところって町のあちこちにありますし、ベビーカーのことでなくても、誰かに助けてもらったほうが楽になることって、いくらでもあると思います。

人の手を借りることで、ママが楽になって、笑顔になって、赤ちゃんをみんなで育てることができれば、それが子どもにとっても、より良い環境になるんですから!

これはマナーとは、別の問題です。ユニバーサルデザインにもつながる考え方ですが、「子どもやママを大事にする社会」は、みんなにとってもいい社会のはずなんですから。』


――なんだか、ホッとしました(笑)。最後に「公共の場でのマナー」に悩むプレママ&ママたちに、励ましのメッセージをいただけますか。

『皆さんが直面している問題の、見方をぜひ、ちょっと変えてみてください。

「授乳」については、社会で波風を立てず、周りに気遣いもさせずに“当然の権利”も使える、赤ちゃんもママも満たされて、多くが心地よく過ごせる、そんな方法もあるのです。さらに子どもの泣き声も、それでほとんど解決できるってことを、まず知って欲しいですね。

「マタニティマーク」や「ベビーカー」のマナーについては、社会としての課題も依然としてあるでしょう。そんななかでママたちが笑顔で過ごすためには、世の中に馴染むようにしながらも、かといって「周りに助けてもらっているのはダメ母」とも思わないことでしょうか。

ママたちが「楽」をすることの社会的なメリットは、また次回あらためてお話ししますけれども、ママが笑顔で子育てできていることは、自分や子どものみならず「社会」にとって絶対にいいことなんです。そのことには、ぜひ自信を持って!

ママやプレママが笑って、気軽に出かけられるような社会を、一緒につくってゆきましょう!』

■光畑 由佳(みつはた ゆか)氏 プロフィール

子連れスタイルで子育てと社会を結びつけ、多様な生き方や育て方、働き方を提案するNPO法人「子連れスタイル推進協会」代表理事&授乳服メーカー「モーハウス」代表。三児の母。内閣府「暮らしの質」向上委員会委員、経済産業省「中小企業経営審議会」臨時委員、茨城県ユニセフ協会評議員、茨城大学社会連携センター特命教授。趣味はお産・おっぱい・建築とのこと。

 

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。