3: 負けの経験は神様からのプレゼント

個人での連勝記録を持つ吉田さんですが、実は北京オリンピック直前の団体戦ではくしくも敗北してしまった経験も持っています。

悔しくてなかなか泣き止まない吉田さんにかけたお母様の言葉はこのようなものでした。

今まで沙保里が119連勝している裏で、119人の選手があなたに負けて泣いてきたのよ。1回負けたくらいで何をくよくよしているの。出典(『泣かないで、沙保里: 負けても克つ子の育て方』著・吉田幸代)

生きていれば調子が良い時も悪い時もあるはず。しかし、良い状態の時は自分の裏で涙を飲んでいる人たちのことを考えることができません。これは誰しもがそうですよね。

自分が負けてしまった時、調子が悪い時こそが自分自身の弱点に向き合えるチャンスなのではないでしょうか。

この後、北京オリンピックで二連覇を成し遂げた吉田さんの「あの時の負けは、神様さまが私に与えた試練」という言葉に、お母様は「沙保里、あれは神さまからのプレゼントでしょ。」そう返したそうです。

4: 必ず最後には受け入れる

2016年、リオデジャネイロオリンピックでの吉田さんの涙を、まだ記憶に新しく鮮烈に思い出せる人は多いはずです。

「銀でごめんなさい」そう言いながら涙を流す吉田さんの姿は、多くの日本人の心を打ちました。日本選手団の主将として、必ず金メダルを持ち帰らなければならなかった。申し訳ない。日本に帰れない。

そう思っていたであろう吉田さんに銀メダルを見せられたお母様は、思わずこんな言葉を吐いたそうです。

「ああ、きれいな色やな。」
出典(『泣かないで、沙保里: 負けても克つ子の育て方』著・吉田幸代)

きっと本当に、心から自然に出てきた言葉なのでしょう。

期待が大きければ大きいほど、その期待通りの結果が得られなかった時、人は相手に対して否定的な言葉や態度を投げかけてしまいがちです。

どんなに厳しい言葉を投げかけても、お母様は吉田さんを否定するような発言はいつの時もしていません。

負けても克つ(勝つ)。そんな吉田さんの精神はどんな自分でも受け入れてくれるお母様がいたからこそ育ったのかもしれません。

「ちょうどうちには金メダルしかなかったので、違う色のメダルがもらえてよかったです。」出典(『泣かないで、沙保里: 負けても克つ子の育て方』著・吉田幸代)

リオオリンピック後の取材陣の質問に、お母様はこう答えたそうです。

もちろん誰しもが勝ち続けられるわけではないので、このセリフは吉田沙保里さんのお母様ならではの発言ですが、このどっしりと構えている心持ちは母親として見習いたいものですね。

連戦連勝、最強、そんなイメージばかりが先行する吉田沙保里さんですが、お母様や家族からの言葉を糧に、「負け」の経験を自分のものにしてきたからこそなし得た勝利なのです。

子どもが自分自身に負けそうになった時、どんな言葉をかけますか?

この本にはその悩みにぶち当たってしまった時のヒントが詰まっています。

ライター&エディター。マーケティング、広告関係の職種を経て、出産をきっかけにライターに。現在は女性向けや子育て関連等のwebメディアでライター、エディターとして活動し、2歳児のマイペースな息子にのんびり育児を実践中。猫と焼肉とビールをこよなく愛するテンプレート小市民。