ラジオの役割は「心に寄り添い、正確な情報を伝えること」
── 4月以降の社会の変化として、沢山のお店が外出自粛で大きな打撃を受けたり、新しい働き方を始めたりしている状況があるわけですよね。そういう中でいろんな声が集まっているのを感じられたということでしょうか。
松尾 まさにそういうことです。特にうちのリスナーに多いのは、SOHOですね。スモールオフィス、ホームオフィスで働いてらっしゃる方、それからフリーランスの方が非常に多いです。なので、そういう人たちの支援は欠かせないという思いでやっていますね。
── こちらの「ACTION FOR TOMORROW」のプロジェクトは何かの番組や特番のような形で結実しましたか。
松尾 5月5日に『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL CHEERS FOR ALL』という、リスナーを応援する特番をやりました。「TEAM J-WAVE」のいろんな取り組み、「ACTION FOR TOMORROW」のいろんな取り組みを紹介していくということを核にやった特番ですね。
── 「ACTION FOR TOMORROW」のプロジェクトも継続的にリスナーのスモールビジネスの支援をやっていくということを考えてらっしゃいますか。
松尾 そうですね。この先の状況では「withコロナ」ということがひとつキーワードになってくと思います。そんなに簡単に元の日常に戻るということはないわけですね。
なので、新しい働き方、新しい生き方、新しい発信の仕方っていうのは、どんな仕事をしている人でも求められてくると思っています。そういう新しいスタイルをリスナーと共有しながら発信していくというのが僕らの役目なのかなと思っています。
── そうした長期的な先行きを見据えて、ラジオというメディアの持ってる力や役割については、どんなふうに考えてらっしゃいますか。
松尾 まずは心に寄り添うということ、そして正確な情報を伝えていくことが大事だと思っています。
新型コロナウィルスの感染は現状では収束に向かってるのかもしれませんが、100年前の「スペイン風邪」にしても、第二波の方が死者が多かったという歴史的な事実もある。
人類の教訓として、そう簡単じゃないと思っていた方がいいんじゃないかと思っています。そんなに簡単に去年までのような日常が戻ってくるということはなかなかない。難しい世の中が続く中にどういう幸せを見出すのか、どういうやりがいを見出すのかが、すごく大事だと思います。
もちろんその一方で、インフラに関わる皆さん、医療従事者の皆さんのように、この状況のなか出勤しなきゃいけない人も沢山いる。そんな人には簡単に「ステイホーム」と言えないわけです。
いろんな立場の人がいるし、とても難しい状況だけれども、それでも僕らができることを日々探してやっていくしかない。その中でのラジオの役割としては、心に寄り添うこと、正確な情報を伝えていくこと。この2点に尽きるんじゃないかなと思います。
── 今回のコロナ禍の中で、ラジオの存在感はとても大きくなっているように感じます。radikoのアプリがスマートフォンやPC、スマートスピーカーで便利に使えるようになったこともあって、聴いている人が以前より増えたんじゃないかと思っているんですが。
松尾 ありがとうございます。実際、リスナーの数はすごく増えています。radikoのリアルな数字を見ても、番組によっては50%増みたいなこともあるくらい、ラジオは今聴かれています。
時間帯としては、特に平日の昼間ですね。自宅でテレワークをしているとき、パソコンに向かっていろんな作業をしているときに、ラジオを聴いてくださっているリスナーが多いと想像しています。
── ラジオが生活の中でより身近な存在になっているということですね。
松尾 そうですね。普段はラジオを聴かなかったけれど、このタイミングで初めてラジオを聴いたという人が増えている。たとえば平日の昼間に学生さんが聴いてくださったりしている。
「今までラジオを聴いたことなかったけど、結構いいですね」とか「ラジオを通じていい音楽に出会いました」とか、そういうメッセージをいただくこともあるんです。そういう方がリスナーとして増えていったら嬉しいという気持ちもありますし、初めて聴いた人にもわかりやすい放送を心がけるようにしています。