客さんの頭から、僕が“亀梨和也”だ、ということを消させる作業が重要
――今回の現場はホラー作品だというのにとても明るい雰囲気だったと聞きました。そこは亀梨さんが主演として盛り上げようと意識したところだったのでしょうか?
いや、その雰囲気は僕が作ったものではないです。監督です。現場のスタッフも普段から中田監督と一緒にやられている方たちで、まさに“中田組”というものがすでに出来上がっていました。僕はそこに参加させていただいたという感覚です。監督主導の、明るく、ときにストイックな現場でした。
僕はそこで主役としてどういう風に立てるか、という作業だったので、できる範囲内でですけど、現場の雰囲気などは気にかけながら過ごしていました。
――今回は亀梨さんから監督にアイデアを出すこともあったそうですね。
僕は自分からこうしたい、とかって言うのが好きなタイプではないので、自分の感覚を提示させてもらったような感じなんですけど。
台本を製本するちょっと手前くらいの段階のときに、監督と会ってお話をさせていただく機会を設けてもらったんです。
そのときに、僕の肌感覚として、このままだとお客さんが、僕が売れない芸人ということが腑に落ちないんじゃないか、と感じる部分があったんです。
僕もこの役を受けたからには、早い段階でお客さんの頭から、僕が“亀梨和也”だ、ということを消させる作業が重要になってくると感じていて。そういう意味で、本当に売れない芸人だと思ってもらうためには、冒頭のコントのシーンが少し弱いなと感じたんです。
もともとは普通のコントをしていて、それがスベっているというだけで。確かに、観客のリアクションでスベっているようには見せられるんですけど、もっと説得力がほしいと思ったんですね。スクリーンを通してこのコントを観るお客さんに対しても。
それで、10年間続けていてもなかなか芽が出ない、という感じってどんなのだろうと考えて、女装をすることを提案しました。これぐらい振り切った方が、空回りしている感じを出せると思ったんです。
――冒頭から「これって亀梨さん?」って思ってしまうくらい、オーラが消えていて、物語に引き込まれました。
最初にお話をいただいたときに、「亀梨くんのイメージを濁したい」というお話があって。なので、タニシさんをオマージュさせてもらった衣装やメガネも使ったんですけど、髪の毛も伸ばしっぱなしでくしゃくしゃにしたり、ちょっとぽやっという感じを出したりもしました。
あとは現場でやりながら作っていきました。やはり映画はチームプレイなので。特に今回はセットでの撮影が少なくて、実際にあるお部屋を使わせていただくことが多かったんですね。
なので、セットだったら、カットを変えるときは映らない方の壁を外してスペースが取れたりするんですけど、それができないからカメラマンさんの後ろにひっついて出番を待ったり(笑)。協力が必要な場面も多かったので、みんなで手探りをしながら一緒に作っていった感覚があります。