工藤晴香 (写真 / 後藤千尋)

女優になると思っていて全く描いていない未来だった

── 映画もお好きなんですよね。

工藤 そうですね。昔は70年代の映画にめちゃめちゃハマって。あとスタンリー・キューブリック監督の作品とか。

最近は『TENET テネット』も観に行ったんですけど、信じられないくらい疲れていたのか寝ちゃって!(驚)。タイムスリップものじゃないですか…だから途中で目が覚めて、自分の中で“時間が飛んだ!”って訳がわからないことになってると思ったんですけど。映画が好きなので、それがすごく幸せだったりしました(笑)。

── それは、贅沢ですね(笑)。

工藤 昔映画館でアルバイトしていた経験もあるんですけど、その時は暇になると「ぴあ」を読んだりしてました。本当に映画は好きで、最近はジョナ・ヒル監督の『mid90s ミッドナインティーズ』も観たんですけど、とても良かったですね!

── そうだったんですね。工藤さんは音楽や映画に対する探究心が深いですね。

工藤 子どもの頃から、テレビで放送される映画を家族で観る機会が多くて。そこから『ターミネーター』を観て、これ『エイリアン2』と同じ監督が撮ってるんだって気がついて、他の作品もって調べて観ていましたね。映画のサントラがキッカケで聴くようになった音楽も結構ありました。

── それだけ映画も音楽も好きだと、幼少の頃に抱いていた夢も気になります(笑)。

工藤 夢は漫画家でした!

── わりと内気なタイプでした?

工藤 (漫画家って言うと)インドアなタイプなのかなって思いますけど、幼少の頃はほとんど外で遊んでいましたね。弟がいるので、ジャンプ作品とか少年漫画を読んでました。

── 業界に入るキッカケはモデルだったそうですが、今の活動に至るまでの経緯も教えてください。

工藤 中学生の頃はもともと芸能事務所には入らずに、サロンモデルや青文字系雑誌『Zipper』『CUTiE』の読者モデルをしていました。撮影の際に交通費をいただけるんですが、そのお金で漫画を買うのが幸せでしたね(笑)。そこでわたしが載ってる雑誌を見てくれた方が、“うちで芸能活動しませんか?”と声をかけてくれて。

めったにないことだし、契約してみたんです。当時の事務所の方針は女優を目指すところで、映画のオーディションをいくつか受けていたんですが、なかなか縁がなくて。“今後どういう仕事がしたいの?”と聞かれた時にアニメや漫画が好きだから、そういう仕事がしたいとは自分でも言っていましたね。

── 当時は声優という選択肢は無かった?

工藤 漠然としてましたね。好きなアニメや映画を紹介したいから“そういう仕事がないかな?”って思ってる中で、当時のマネージャーさんがアニメの声優オーディションを持ってきてくれました。

── TVアニメ『ハチミツとクローバー』では花本はぐみ役、『それいけ!アンパンマン』のポッポちゃん役、さらに現在では『バンドリ!』でも声優アワード歌唱賞を受賞しましたが、好きを仕事にすることに対してはどう感じますか?

工藤 実際に声優を始めて、大変だと思いました。今でもそうなんですけど、難しくて壁にぶち当たることはいっぱいあるけれど、やり甲斐はあります。好きゆえに苦しい時もあるんですけど、それを乗り越えた時の達成感は“病みつきになるな!”って思います。

今でこそギターを弾いてステージに立っていますが、始めたての頃はまさかそんな未来がくるとは思ってもみなかったので、人生って面白いですね。今は最高に楽しいけど、当時は女優になると思っていて全く描いていなかった未来だったので、“来年はどうなってるんだろう?”って楽しみではあります。

── ソロ・アーティストとして活動したい気持ちが芽生えたキッカケは?

工藤 『バンドリ!』の声優として、ギターを弾いてステージに立つというキャラクターを演じて、また別の角度から音楽に触れる機会が増えた時ですね。“もしキャラクターではなく、工藤晴香として作品をつくってステージに立ってみたら…”って考えて、音楽が好きが故に欲が出てきて、“こういう挑戦がしたい”とか“ソロでやりたい”というふうに明確に思い始めました。