――ゲイのカップルが、親に虐待されているダウン症のある少年を育てようと奮闘する『チョコレートドーナツ』。単館上映から口コミで大ヒットした同名映画(トラヴィス・ファイン監督)の、初の舞台化ですね。
「アメリカですでに計画されていると思ったら、まだ誰も動いていなかったんです。5年ほど前に、トラヴィス・ファイン監督が来日した際に、運よく京都でお目にかかれて、ランチをご一緒してすっかり意気投合しまして、「君にやってほしい」と言っていただけたのが、まずうれしかった。
でもそこから先は、すんなりと決まらないことが多くて、5年かけてやっとここまでこぎ着けた、というのが正直なところです。」
――映画を観た人にとってはそのイメージが強烈で、キャスティングのハードルが高そうですね。
「東山紀之さんは、よく挑戦してくれたなと思います。だって映画版の主人公ルディ役をやったアラン・カミングの入魂の演技は、すごかったですからね。あの映画を見て、それ以上のものに挑戦しようとするのは、なかなか勇気がいることです。
東山さんが、そこに懸命にダイブしようとしてくれていることを、とてもうれしく思っています。ドラァグクイーン的な要素に関しては、大きな抵抗はないみたいですし。
ルディという人は理想主義者で、理不尽な現実を前にして「しょうがない」で済ませることができないタイプ。次々に社会の理不尽さに見舞われ、痛みと苦しみでズタズタになっても、決して自分の意志を曲げず、歯ぎしりしながら立ち向かっていくようなキャラクターです。
一方パートナーのポールは、厳粛な家庭で育った検察官で、社会の規範に反発を感じながらも、身を守りながら生きていこうとする人。親近感を抱けるタイプですが、悩みながらも好きになったルディのことを理解しようとしてゆく中で、次第に芯の強さをみせていくようになります。二人の心の変化を楽しんでいただければと思います。」