この日のライブのテーマは「エマ」

30年間のキャリアの中から年代を超えて演奏されるナンバーを貫くテーマは「エマ」。

「なんと本日は、菊地英昭さんことエマさんのお誕生日でございます!」という吉井の言葉通り、この日56歳の誕生日を迎えたエマを讃え、エマ作曲(または吉井・エマ共作曲)による楽曲をフィーチャーした一夜だった。

菊地英昭(写真:横山マサト)

初期のブギーナンバー「This Is For You」では、「Vocal、エマ!」という吉井のコールをきっかけにエマがボーカルを取り、最後は吉井と見事なハモリを響かせる。

「街の灯」のラストの“聞いて下さいな”のフレーズを吉井が会場上手・下手のオーディエンスにアピールするように歌い上げ、熱い拍手との「コール&レスポンス」を描き出す……といった具合に、感染防止の観点から客席には歓声もシンガロングもないものの、そこには確かにステージと観客の濃密な一体感があった。

イントロのエマのアルペジオが会場を軽やかなクラップで包んだ「Neurotic Celebration」では、曲の途中で観客一丸の手拍子で「エマさん」を再現したり、「Happy Birthdayを歌おう、拍手で!」(吉井)とまさかの手拍子版「Happy Birthday To You」が響き渡ったり、とこの日ならではの名場面が続出。

そんな多幸感に身を委ねるように、エマのアルペジオに重ねて“あなたの燃える手で / あたしを抱きしめて”と「愛の讃歌」の一節を口ずさむ吉井。

同時に生配信が行われていたニコニコ生放送のコメントが、続く「イエ・イエ・コスメティック・ラヴ」で舞台背後の巨大ビジョンにテロップで映し出される中、曲中で♪エマはまだ 56だから〜と「センチメンタル・ジャーニー」の替え歌を挿入する吉井に、画面のコメントが「56だから〜」と応えた「タイムライン合唱」も、ライブ配信も含めた特別な一夜の「一体感」を明確に物語るシーンだった。

MCではバンド結成当初を振り返る吉井が「なかなか正式メンバーになってくれなかった」とエマについて語る。

「ここの2人(吉井&ヒーセ)は、わりと好きな音楽も似てるっちゃ似てるんだよね。ロックンロールの甘いメロディが好きっていう。でも、この(菊地)兄弟が……いい意味でヘンタイなの(笑)。ヘンタイ感をTHE YELLOW MONKEYに持ち込んだ人!」という吉井の言葉からは、30年経った今なお、いや今だからこそお互いに向けられる惜しみないリスペクトが窺える。

菊地英二(写真:横山マサト)

ロック少年のイノセンスを凝縮したような「空の青と本当の気持ち」までエマ楽曲のコーナーが続いたところで、暗転。

ビジョンの映像では時間がどんどん巻き戻され、2016年の代々木公演、さらには再始動の象徴である金色のサナギと「準備ALRIGHT?」のメッセージが映し出される。

舞台に再登場したメンバーが力強く響かせたのはもちろん、再始動の象徴的ロックナンバー「ALRIGHT」。刻一刻とギアを上げていく吉井の歌声とバンドの熱演は、「SPARK」でさらなる高揚感を体現していく。