『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』 ミリアム・カーン《美しいブルー》2017年 油彩、キャンバス 200×195 cm Courtesy: WAKO WORKS OF ART 撮影:Daniel Martinek

【TOPIC4】現役女性アーティストのパワーがすごい

2021年は女性アーティストの個展やグループ展の開催も活発だ。

かつて、女性アーティストの展覧会は「女性ならではの感性」や、「女性の持つしなやかな〜」など、アーティストの個性が「女性」という言葉に収斂され、既存の枠組みのなかに押し込まれてしまうこともしばしばあった。

ジェンダーのみならず、様々な側面からアイデンティティの尊重が図られている2021年、女性アーティストの展覧会もまた、私たちにあたらしい発見をもたらしてくれるだろう。

『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』 三島喜美代 《作品 19-C5》2019年 シルクスクリーン印刷した陶に手彩色、鉄 サイズ可変 Courtesy: Taka Ishii Gallery

森美術館の『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人』(4/22~9/26)は、あいちトリエンナーレ2019にも参加したミリアム・カーンや様々な工業素材を素材にする三島喜美代をはじめ、71歳から105歳まで70代以上の女性アーティスト16名の展覧会。

作品とともに人生の軌跡も振り返り、キャリア50年を超える彼女たちのエネルギーがどこから来たものかを検証していく。

また、水戸芸術館で開催される『ピピロッティ・リスト―あなたの眼はわたしの島―』(8/7~10/17)や、千葉市美術館の『福田美蘭展(仮称)』(10/2~12/9)にも注目。

ピピロッティ・リストは、軽やかな映像インスタレーションで国際的に評価の高いアーティスト。

今回の展覧会は、約30年間の活動の全体像を振り返る回顧展となる。福田美蘭は、新人洋画家の登竜門とされている安井賞を史上最年少で受賞したアーティスト。

名画を下敷きに見る人の常識や認識を揺さぶる作品で知られている。本展でも、千葉市美術館の収蔵品をベースにした作品が新作として発表される予定だ。

【TOPICS5】なにげにエジプトが熱い!

『国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話』(江戸東京博物館)展示風景

2021年、2つの大型エジプト展が日本を巡回する。

この2つの展覧会は、従来のようなエジプト王朝の至宝や宝飾品を中心に紹介するものではなく、新しい見方を提案してくれる刺激的な展覧会だ。

江戸東京博物館で開催中の『国立ベルリン・エジプト博物館所蔵 古代エジプト展 天地創造の神話』(~4/4)は、古代エジプト人の信仰や死生観をテーマにした展覧会。

オシリス神やイシス神、猫のすがたをしたバステト神などエジプトの様々な神々が登場する展覧会は、神秘的であり、ときにユーモラスだ。

また、Bunkamura ザ・ミュージアムなどで開催予定の『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』(4/16~6/27、東京展ほか)では、発掘調査時の調査記録やミイラのCTスキャン解析データを公開するなど科学的アプローチを図るほか、10点以上のミイラ棺の身と蓋を立てた状態で展示するなど意欲的な試みも行う。

『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』 《ホルの外棺》後期王朝時代 (蓋)長さ199cm、幅72cm、高さ38cm ライデン国立古代博物館 Image©Rijksmuseum van Oudheden (Leiden, the Netherlands)

これまであまり知られてこなかった古代エジプトについて学びを深められる貴重な機会だ。

『テート美術館所蔵 コンスタブル展』 ジョン・コンスタブル《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》1816 -17年、油彩/カンヴァス、101.6×127.0cm、テート美術館蔵 ©Tate

【TOPIC6】風景へのさまざまなアプローチを比較!

ずっと家にいる日々が長引くと、人はどうしても外に出て広大な風景を見たくなってくる。けれども遠出はむずかしい……。そんな時期は、風景画を見るのもおすすめだ。

三菱一号館美術館の『テート美術館所蔵 コンスタブル展』(2/20~5/30)は、19世紀初頭に活躍したイギリスの風景画家・コンスタブルの大回顧展。歴史画の背景と見なされた時代の風景画において、コンスタブルははありのままの自然を描き、自国の風景画を刷新し、その評価を引き上げた。

また、コンスタブルと同時期、フランスでも風景画に新しい動きが発生。SOMPO美術館『ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ』(6/25~9/12)では、戸外で描くことを覚えた画家たちにより、風景画の表現が大きく変わっていったことを丹念に追っていく。

そして、自然の中の外光の美しさに魅了され、その探求と表現方法を追求した印象派の画家、モネの風景画に焦点を絞った展覧会が、アーティゾン美術館『クロード・モネー風景への問いかけ』(5/29~9/10)だ。

モネは、それまでの風景を描いた作品のあり方を根底から覆し、新しい時代の世界観とその詩情を伝達する手段としての風景を描いた。この展覧会では、世界最高峰のモネ・コレクションを有するオルセー美術館の作品を中心に国内の作品と合わせて構成され、風景画家としてのモネに迫る。

同じ風景画というジャンルでも、画家や時代によって描き方、描くものは大きく変わってくる。3つの展覧会をめぐり、風景画の魅力を堪能してみよう。