尾野真千子の迫力に、必死に食らいついていった

『茜色に焼かれる』 © 2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

――親子役となった尾野真千子さんと、実際にお芝居でぶつかり合ってみた感想は?

すごいなと思うところはたくさんあったのですが、最後の方に、尾野さんがすごい気迫で神社に行く場面があるんです。

そこで、ある人をやっつけようとして、僕がそれを止めに入るのですが、そのとき、尾野さんが対峙する相手に「おい」って言うんですけど、ものすごい気迫で。

そのひと言だけで、神社の鳥たちがバサバサ!って飛んでいくくらいの迫力が、現場全体に伝わりました。

僕はそれを止めなくちゃいけないので、自分も同じくらいのテンションまで持っていく必要がありました。あのときは、自然に息遣いも荒くなっていたと思います。

――とても迫力あるシーンでした。ちなみにクランクインはどのシーンから?

おじいちゃんに会いに老人ホームへ行って、目の前からリモートで話す場面です。

基本、石井監督は僕が質問しない限りは、アドバイスはあまりないのですが、そのとき、最初に「間を大切にするように」と言われました。

それまでは僕、“間”について意識したことがなかったんです。というか、むしろ間を取るのが苦手でした。

間を取ると申し訳ないような気がして、自分のセリフが来たらすぐに言う感じだったんです。クランクインのときも、たぶんそうだったのですが、石井監督からアドバイスされて。

『茜色に焼かれる』 © 2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

――では、そこから演じることへの意識が変わったんですね。

この作品の撮影前と撮影後ではだいぶ変わっていると思います。実際、出来上がった作品を観たときにも、すごく間を取っているなと思いました。

――出来上がった作品をご覧になったとき、クレジットに名前が2番目にバン!と出てきて、感激したのでは?

脚本や作品のクレジットで名前を見た時も感動しましたが、クランクアップのときの気持ちの大きさを覚えています。

前から、みんなでひとつの作品を作るという役者の仕事が好きで、その後の試写会や、公開されてみんなが観てくれるときにすごく達成感を感じます。

さらに今回は、本当に濃密な撮影時間で、クランクアップが近づいてくると、すごく寂しくて、あっと言う間でした。