自律と失敗はセットで考える

学校に通うようになると、必要以上に失敗をおそれる子どもがいます。

本当なら、安心して失敗できる環境があって初めて子どもは成長し、自律できるようになるもの。ですから、自律するためには何度でも失敗してかまわないのです。

失敗してもかまわないとは、本人が失敗してもヘラヘラしているという意味ではなく、失敗を次のチャンレンジへの糧にしていけるということです。

学校教育では子どもたちは常に正解を探すように言われています。テストなどはその最たるものですが、どんな子どもでもバツよりマルをもらったらうれしいもの。その結果、正解から少しでも外れることを恥じるようになるのです。

それならせめて家では、安心して失敗も挑戦もできる環境を与えてやりたいですよね。そのために親ができることは、叱責やダメ出しをしないことです。

激しく叱れば叱るほど、子どもは心理的に余裕のない状態になります。そうなると、もはや思考の余地は残っておらず、ただ叱られた記憶のみが残るという最悪の事態に。

反対に、子どもが心理的に安定しているとたとえ失敗しても「では次はどうしたらいいだろう」と思考を発展させることができるのです。

「失敗しても大丈夫だよ」「失敗こそが学びなんだよ」と日頃から子どもに声がけしてあげられるといいですね。

叱ることは百害あって一利なし

そうはいっても「子どもの成長のためには時には叱ることは必要だ」と考える人もいるかもしれません。

もう一人の著者の青砥瑞人さんは、よほど人の道に外れたことをした場合をのぞいて、子どもを叱ることが子どものためになることはないと断言しています。

人の脳には前頭前皮質と呼ばれる部位があります。前頭前皮質は、思考や意思決定、感情抑制など脳のなかでも高次機能を担う重要な部位です。

心理的に安定しているとこの部位は正常に機能しますが、心理状態が不安定になると、この働きに制御がかかります。つまり、心理的安全性が保てないと、まともに考えることができなくなるということです。

「子どもたちはほめられることよりも、ダメ出しされることに対して圧倒的に敏感」と青砥さん。叱っても後から同じくらいほめればいいのかと思いがちですが、それでは間に合わないほどだそうです。

その理由として、脳にもともと備わっている「エラー検知機能」の存在があります。この機能のため、子どもは一度叱られただけでも自己否定しかねません。

エラー検知機能のせいで、どんな人でも他人の長所より欠点が目につきやすくなります。自分に対しても同じで、ほうっておくと自分の良さよりも自分の欠点ばかりが気になってしまうのだそうです。そんな経験に覚えのある人もいるのではないでしょうか。

一度否定された事実は子どもの中に自分の欠点として強く残り、それが重なれば自己肯定感は低下していくでしょう。

子どもに心理的安全性を与えるとは、ストレスすべてを取り除いてあげることではなく、ストレスに遭遇したときに自分で心理的安全状態をつくっていけるように導くことです。

ストレスのない人生はありません。何があっても人のせいにせず、自分が人生の主人公になって乗り越えていける力、それが本当の意味での「自律」なのです。

他のキーワードも気になった方は、ぜひ本書をお手にとってみてくださいね。