登場人物の感情をセリフではなく画で見せる
――個人的にセリフがなくて、食堂で伯父さんの背中が映されるシーンが、何でもない情景なのに泣けました。
後半は(伯父さん役の)たかおさんとのシーンが多かったんですけど、僕もそのシーンは印象に残っています。
最初、たかおさんからは「現場ではあまりしゃべらないようにしよう」と言われていたんです。関係性として久しぶり会った伯父さんで、仲が良い設定でもなかったので。それで僕も「わかりました」って答えたんですけど、結局、後半すごく仲良くなってしまいました(笑)。
物語の終盤、ネタバレになってしまうから詳しくは言えないんですけど、伯父さんがある状態になるところから吹っ切れたんでしょうね(笑)。そこからはすごくしゃべっていました。
ヒロムが伯父さんの家に行って、一緒にご飯を作って食べたりする辺りから二人の距離が近づいていくので、たかおさんともどんどん距離が近くなっていけたのは嬉しかったですね。
――他にもセリフにはせず、状況で伯父さんがどんな人生を歩んできたのか想像させるシーンなどもあり、言葉以上に感情に訴えかけられることが多かったです。
そこが早川さんのすごいところだと思います。登場人物の感情をセリフではなく画で見せるのは僕も好きな部分で、それが脚本の段階から伝わってくるんですよ。ここは画で伝えたいんだなって。
だから自分もここではこういう感情でいればいいんだ、というのがわかる脚本でした。すごく細かいところまでよく考えられていました。
――完成した作品を観て、磯村さんがグッと来たシーンはありますか。
このお話は、倍賞(千恵子)さんが演じるミチさんを追ってストーリーが進んでいくんですけど、普通の日常を描いているだけでも胸がギュッとなることがありました。
スーパーでお惣菜を選んでいる姿を見るだけで、なんというか、自分のおばあちゃんの姿もちらつくし、そのおばあちゃんが揺らぎながらも自分で死を選択していく過程が。
特にコールセンターのオペレーター役の河合(優実)さんとの電話のシーンは好きでした。ミチさんが“プラン 75”を実行することを止めたいけど、止められない。素敵なシーンでした。
――倍賞さんとの共演はどうでしたか。
倍賞さんとの共演はそこまで多くなかったのですが、目を合わせるシーンがあって、そのときの目がすごく魅力的でした。役柄のせいかもしれないんですけど、力強い目をしていて、そこに引き込まれるような感覚もありました。何もしゃべらなくても目が語っている。俳優にとっては必要な要素ですよね。
それからすごくチャーミングな方で。会話の感じが可愛らしくて、場を和ませるようなこともおっしゃっていました。ミチさんと近いというか、倍賞さんとミチさんの境目があまりないのかもしれないです。そんなふうに作っていらっしゃったのかも知れないですけどね。