お芝居を“できた”って思えたことがない
――最近の菊池さんはどんどん活躍の場を広げていらっしゃる印象があります。ご自身でも感じることはありますか。
いろんなお仕事をやらせていただけているとは思います。あと、僕の場合は特殊だと思うんですけど、バラエティに出演している僕を見て、ドラマや映画のオファーをいただけたり、その逆もあったりするんです。
ドラマに出ていて、他のドラマの仕事とかはよくあると思うんですけど、このつながり方には、改めて面白い世界だなと思いました。結局、いろんなところでつながっているんですよね。
そういうオファーをいただくと、多岐に渡るジャンルでお仕事をさせていただけている実感は芽生えてきますね。
――どんなときに自分自身で手応えを感じますか。
バラエティの場合は、その場で言ったことを笑ってもらえたり、リアクションが返ってきたとき。舞台に近い感覚ですかね。
ただドラマや映画は、演じているときは監督のOKをもらえるか、もらえないかの2択しかリアクションがないから、何かふわふわとした感覚はあります。
今回もすごく怖かったです。結構ぶっ飛んだ役だし、クズすぎるから、そもそも受け入れてもらえないようなキャラクターだと思うんです。それに加えて僕のお芝居までできていなかったら、もう目が当てられないと思っていたんです。
正直、今もまだ怖いです。自分の中では“上手くできたかな?”という感想なので、(公開前の)リアクションのない状況はドキドキしています。映像作品はやるのは楽しいんですけど、完成するまでに時間もかかりますし、手応えは感じにくいのかなとは思います。
お芝居ってそもそも全然正解がわからないから、お芝居を“できた”って思えたことがないんです。そういう意味では手応えを感じられるようになりたいなと思います。“キター!”っていう感覚あるのかな? わからないけど(笑)。
――改めて、完成作を見た感想を教えてください。
ダメな人ばかりが出てくる物語ですけど、それをどこかでわかってしまう自分がいるんです。先ほども言いましたけど、彼女に対する劣等感とか、子供ができることを怖いと思ってしまうこととか、自分を好きになってくれる人に甘えてしまうとか。
表に出していなくても、“こういう自分っているよな”っていうところがあるので、何か自分の嫌なところを見せつけられているような感じにもなりました。
自分はそこを表に出さずに我慢をしているけど、この物語のキャラクターたちは我慢していない。そのむき出しになっている部分は、普通はしないだろうっていうツッコミどころではあるんですけど、どこかで理解はできてしまうし、憎み切れない部分でもありますね。
そして、女性キャラクターたちに対しては“こんなクズ男を愛してくれてありがとう。いつも包み込んでくれてありがとう”というような感謝も生まれました。
自分の弱いところをグッと引っ張り出されて、それすらも肯定してもらえるような気もして。確かになんやかんや言いたくなる部分はあるんですけど、嫌な気持ちで終わるような作品ではないと思います。
今の世の中って、人のことにいろいろ口出ししちゃうじゃないですか。けど、結局二人が良かったらそれでいいじゃんって再認識させられる。そこに落ち着いていくところが、見せ方として上手だなとも思いました。
やいのやいの言っても、それも一つの愛の形だよねって。そこに着地できる作品だなと思います。意外にスッキリするし、自分のことも相手のこともちょっとだけ許せる、そんな素敵な映画になっていると思うので、ぜひ皆さん劇場でご覧ください。
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多忙なお仕事の合間を縫って行わせていただいた今回の取材でしたが、一つひとつの質問に丁寧に、かつ的確に答えてくださいました。
なので、実際にお話を聞いた菊池さんと怜人は全く重ならいのですが、スクリーンの中の怜人と菊池さんはなぜかすごく重なります。本気の“ダメ男”にしか見えなくなってしまいます。ぜひこの感覚を劇場で味わってみてほしいです。
作品紹介
映画『もっと超越した所へ。』
2022年10月14日(金)全国ロードショー