対処法:アプローチしやすい方法は生活習慣の改善。夜の過ごし方を変えるよう促す
私は大人にも子どもにも、まず生活習慣の改善を提案します。早寝早起きや規則正しい食事、運動習慣などによって生活リズムを整えること、照明を暗くするなど寝室の環境を変えること、入眠の儀式を持つことなどで、睡眠の質を改善していきましょう。
それでも難しいようであれば、睡眠専門外来などを受診させることです。子どもの場合は、自治体の保健センターや小児科に相談を。
睡眠障害を軽く見てはいけません。睡眠不足からくる神経の乱れが発達障害の特性を助長し、さらに睡眠障害がひどくなる悪循環におちいりかねません。発達障害の人ほど、良質な睡眠が必要なのです。
ケース3:お風呂に入りたがらない
発達障害の子どもには、お風呂に入りたがらない子が意外にいます。
理由はいくつか考えられるのですが、ASDのY君 (5歳・男子) は感覚過敏で、普通の人ならなんとも思わないシャワーの水が痛く感じられるため、お風呂が苦手とのこと。
ADHDの人の場合は、お風呂に限って嫌だというのではなく、毎日同じような時間に同じことをするのが苦手という特性による場合が少なくありません。
毎日、洗面所で顔を洗ったり、歯を磨いたりするのを、どうしても面倒に感じてしまうようです。
対処法:本人ができるだけ気分良く入れる方法を実践するとともに、入浴の意義をはっきり伝える
たとえば、シャワーが苦手であれば「湯船に浸かるだけでいいよ」と声をかけ、慣れさせていくことが大切です。
毎日、無理に入れるより、最初は一日おきになどと決め、入るたびに「きれいになった~。いいにおい~」とたっぷり褒めてあげましょう。
そしてシャワーハット、やわらかいガーゼやスポンジ、香りのいいシャンプーや石鹸など、本人が好む道具を見つけ、少しでも気持ち良く入れる 工夫をするといいですね。
そして「お風呂に入らないと臭くて汚くて、周りの人も気分が悪くなっちゃうね」と、お風呂に入る意義と理由をはっきりわかりやすく説明しましょう。
成長段階にある子どもは、特に親から愛情的な関わりが形成されないと2次障害として情緒や対人関係に問題が生じる愛着障害が出てきやすくなります。
大切なのは、「本人たちの見ている世界を理解すること」と岩瀬先生。周囲の人の理解により、環境を整えてあげることが何よりも助けとなります。
【参考書籍】
発達障害の人が見ている世界 精神科医が伝えたいADHD、ASDの人との付き合い方
【著者】岩瀬 利郎
精神科医、博士(医学)。東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。著書多数。