三浦さんの持っている元々の優しさがシンクロしている

撮影/稲澤朝博

――壇先生役を演じた三浦さんの印象を教えてください。

すごくシンプルな答えになるんですけど、優しい人なんです、三浦くんって。それで、壇先生自身も、好戦的で「俺は戦う男だ」ってなる部分もあるけど、優しいんですよ。人間愛があって、お金になるとか、ならないとかは関係なく、金子勇の名誉挽回のために闘った人ですから。

その壇先生の根底にある優しさを継承していると言うと変かもしれないんですけど、三浦さんの持っている元々の優しさがシンクロしていると思いました。

劇中での金子勇と壇先生との距離感は、僕一人で作り出せたものではなくて、三浦さんの優しさと、壇先生の優しさが繋がって出来上がったものだと思っています。

©2023映画「Winny」製作委員会

――お二人で役作りについて話すこともありましたか。

結構話しました。クランクイン前にも何度かお会いして、いろいろ話をしました。この映画のこともそうですけど、私生活のこととか、これまでの芸能人生のこととか、どんな役者さんに影響を受けたとか。

縁があって、今回、バディのような関係性を演じることになったので、現場に入る前に、横に居ても何も気負わないし、相手に対して何でも言える関係性ができていたのは、僕はやりやすいと思いましたし、三浦さんもそう思ってくれたと思っています。

撮影/稲澤朝博

――東出さんはこの映画を見た人に何が伝わればいいと思いましたか。

撮影中はそんなことは全く考えずに演じていたんですけど、完成作を観たときに、最後に金子さんご本人の映像が出てくる場面があって。僕もそれは観るまで知らなかったんですけど、その映像の中で金子さんが語れていることが、この映画の伝えたいこと、意義のようなものなのかなと感じました。

――ご自身がこの作品を通して感じたことは?

壇先生を始めとする弁護団の皆さんが、結果的に7年の歳月をかけて判決には勝訴したけれど、この裁判に携わった人たちは全員が敗者だとおっしゃっていて。警察、検察、弁護団、金子さん……ただ、全員がその結果を悲観しているわけではなくて、弁護団の先生方からは、それでも自分たちは大事なことをやったんだという信念が感じられたんです。

その熱いものがこの映画には息づいているんじゃないかと。僕のおごりかも知れませんけど、そういう先生方の想いは、ここに焼き付けられたんじゃないかと思っています。

――今後こういう作品に携わっていきたいなどの希望はありますか。

こういう作品というのは漠然とし過ぎているんですけど、今、役者の仕事が楽しいと感じているんです。難しいこともありますし、自分の実力ではどうこうできない瞬間もあるし、挫折感もあるんですけど、でもまたこの『Winny』のような役や作品に、本域でのめり込めるような芝居に、巡り会えたらいいなと思っています。


実際に行われた裁判でのやり取りを再現するなど、リアルにもこだわった本作ですが、単に事件のあらましを伝えるものではなく、金子勇と彼を取り巻く人たちの人間ドラマとして描かれています。

“Winny事件”を知る人はもちろんですが、事件についての知識が無くても、純粋に好きなことを追求したことで、その好きなことを国から奪われる結果となった人物の生き方に、何かを感じることができると思います。

作品紹介

映画『Winny』
2023年3月10日(金)全国ロードショー