── 逆に、日本とデンマークの共通点を感じることはありますか?
気持ち良いこと、心地良いこと、つまりは広い意味でウェルビーイングを感じるポイントは、国を超えて共通していると思います。
家族関係や性格など、人によって異なるものではありますが、傾向としては日本でもデンマークでも、多くの人が家族と夕食をとる、家族団欒の時間を心地良くて楽しいと感じていますよね。ここでポイントなのは、そういった時間を大切に出来ているか否かです。
デンマークでは「大事だよね」ではなく「大事にしているよ」というアクションまで積極的に持っていけている人が多く、それを支える社会の雰囲気や仕組みが充実しています。一方の日本では、多くの人が「家族の時間は大切」と思ってはいますが、働き方の仕組みや“飲みニケーション”の影響で出来ていない現状があるのかなと感じます。
── ウェルビーイングな状態の本質は共通しているが、それに応える仕組みがない。
はい。もちろん、違う文化や社会の中で育っている以上、個人のマインドセットにおいても傾向としての違いはあります。
例えば、デンマークは“我慢しない人”が多いですね。それを一概に良いこととは言えないのですが、自分の気持ちや権利をより誠実に伝えられることは、メンタルヘルスの観点からも大切なことです。日本語の「過労死」という言葉がそのまま英語の「karoshi」にもなっていますが、少なくともデンマークにはない概念です。
加えて、日本は遠慮して他者と距離感を置くという文化が濃いですよね。「迷惑をかけてはいけない」「邪魔をしてはいけない」と調和を重んじる文化は美しいものですが、他者に頼る方法も身につければ、もっと身軽になるんじゃないかなと思います。