6月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中の映画『WALK UP』主演のクォン・ヘヒョが日本公開記念トークイベント付日本最速上映会登壇のために来日、『韓流ぴあ』単独インタビューに答えてくれた。
ベルリン国際映画祭銀熊賞を5度も受賞したホン・サンス監督の長編第28作目にあたる『WALK UP』。
ベルリンだけでなく、カンヌ、ヴェネチアなど世界の映画祭から愛されるホン・サンス作品の魅力、そして、事前にシナリオを作成せずに進行する撮影スタイルや俳優はノーギャラで出演する?といったホン・サンスを取り巻く噂について…etc.
知るとまた見たくなるホン・サンスの謎をクォン・ヘヒョが今、解き明かす!
ホン・サンス監督作には台本がない!?
――一般的に映画の場合、俳優はシナリオを見て作品への出演を検討する場合が多いと思いますが、ホン・サンス監督の場合はどういうふうにオファーが来るのですか?
「9月から、そうだな…3週間くらい映画を撮ろうと思っているんだけど、場所はこんなところを考えていて、君、スケジュール大丈夫?
あ、今回、君は主人公だからほかの作品が入っていたら難しいんだけど、フルタイムで入れる?」以上、終わり。
この程度ですね(笑)。で、撮影直前に、何をやっている人物なの? また監督? って聞くと「監督になると思う」って。「may be」なんです(笑)。
――ホン・サンス監督は事前にシナリオがないことで有名ですが、実際に撮影はどうやって進むのですか?
韓国でも多くの方が誤解されている部分なんですが、シナリオがないわけではないんです。
どんなシーンなのか、設定だけ伝えるというのでもありません。ホン・サンス監督にとってシナリオというのはとても大切なものです。
今回の作品でも、ご覧になった方は分かると思いますが、2階でワインを飲む場面は17分のロングテイクです。
シナリオにするとA4用紙で5枚以上になるせりふを一行も間違えずに撮影しなければならないんです。
これまで28年に及ぶホン・サンス監督作品において、俳優がアドリブで演技したことは一度もないと思います。
2000年代初めに若い監督たちがホン・サンスを真似しようとして俳優に設定だけ伝えてアドリブで会話させればいいと思っていた時代がありましたが、それを当時は「ホン・サンス病にかかった」と言っていました(笑)。
ホン・サンスの映画でシナリオは本当に重要で、ディティールまで詳しく書かれていますし、せりふのリズム感、ニュアンスまでとても大切です。
なので、監督の映画はNGも多いですし、テイクもめちゃくちゃ重ねます。場面の中の映像美、パンとズームに至るまでリズム感がとても重要なんです。
例えば、映画のエンディングシーンは朝の9時から始めて夜までかけて40回近く撮り直した場面です。気に入る瞬間をカメラに収めることができるまで撮り直すんです。
というわけで、ホン・サンス作品にシナリオは存在します。ただ、撮影当日にその日の分のシナリオがもらえる、そして、次の日のシナリオは分からないってことですね(笑)。