不可解な殺人事件から始まり、回を追うごとに意外な事実が明らかになっていき、目が離せない展開が続く『完璧な家族』。前回2回にわたってお届けした行定勲監督のインタビューでは、各キャストの話を中心に詳しく語っていただいた。今回は先に紹介した若手俳優4人を支えたベテラン俳優たちについて、本作の役どころやキャリアを振り返ってみたい。
『完璧な家族』ベテラン俳優のすごさ
主人公ソニの養父で検事出身の弁護士ジニョクを演じたキム・ビョンチョルは、多くの作品でおなじみの名バイプレイヤー。’01年に舞台デビューした後、さまざまな映画で脇役として地道な活動を続けた。
’16年に『太陽の末裔〜Love Under The Sun〜』の主人公の上官役に続いて、『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』で演じた悪霊役で、短い出番ながら強烈な印象を残して一躍注目の存在へと浮上。エリートも庶民も、悪人も善人もどんな役でも説得力を感じさせる演技力で、その後も話題作に次々起用されている。
その中で代表作の一つとなったのが『SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜』(‘18)。子どもたちを徹底的に管理するロースクール教授の父親は、典型的な権威主義の家父長で、最終的に家族から背を向けられてしまうという役どころだった。
最近では『医師チャ・ジョンスク』(‘23)でも大学病院教授役に扮し、見下していた妻からノーを突きつけられるモラハラ夫役が話題を集めた。両作ともコミカルな面をのぞかせるキャラクターだったが、今回はシリアス一辺倒。どこか不気味さを漂わせつつ、秘密を持つ父親を巧みに演じている。
ソニの養母ウンジュ役は、キム・ビョンチョルとは『SKYキャッスル…』でも夫婦役を務めたユン・セア。最初は夫に従っていたが、子どもたちのために夫に反旗を翻す姿が潔かった。
本格デビューとなった‘05年の『プラハの恋人』で大役を任された後は多くのドラマでキャリアを積んで、’12年に『紳士の品格』で知られるようになった。その後『秘密の森~深い闇の向こうに~』(’17)の検事の妻役でミステリアスな魅力を見せて存在感を高め、『SKYキャッスル…』で幅広い人気を獲得。最近作『ヒエラルキー』 (‘24)でもプライドの高い財閥家の母親役を演じ、上流婦人役ならこの人、という信頼感を新たにした。
『SKYキャッスル…』では終了後すぐに、ドラマの役柄そのままにCM出演するほど人気を得た夫婦コンビの復活が、今作の大きな注目ポイントでもある。優雅な上流階級の妻という点では同作と同じだが、今回は優しそうな母親に見えて二面性もありそうな役柄で、ソニの妄想シーンではホラーかとも思える恐ろしい姿も披露している。
ちなみに、ユン・セアもキム・ビョンチョルも独身のため、ファンの願望もあって熱愛説が出たこともあったが、あくまでも気の合う共演者だという。