甘いもの欲求と上手に付き合うためのセルフケアを紹介

自分の甘いもの欲求の背景にある原因の傾向が見えてきたら、次は具体的な対策です。厳しい制限や我慢は長続きせず、かえってストレスになることも。日常生活のなかで無理なく取り入れられるセルフケアで、甘いものとのよりよい関係を築いていきましょう。

1.食生活の工夫

「食べる順番」で血糖値の波を穏やかに:食事の際、野菜や海藻、きのこなどの食物繊維が豊富なものから食べ始める「ベジファースト(カーボラスト)」を実践しましょう。食物繊維が糖の吸収を穏やかにし、血糖値の急上昇を防ぎます。理想的な順番は、(1)食物繊維 → (2)タンパク質(肉・魚・卵・大豆製品) → (3)炭水化物(ご飯・パン・麺類)です。

「ゆっくり、よく噛む」を習慣に:早食いは血糖値の急上昇を招き、満腹感を得る前に食べ過ぎてしまう原因にもなります。一口につき30回程度噛むことを目標に、時間をかけて味わって食べるようにしましょう。

「質のよい甘味」を賢く選ぶ:どうしても甘いものが欲しいときは、精製された砂糖ではなく、自然な甘味や栄養価の高いものを選びましょう。果物(食物繊維も豊富)、ドライフルーツ(少量)、干し芋、甘栗、ナッツ類(無塩)、ヨーグルト(無糖)、チーズ、高カカオチョコレート(カカオ70%以上)などが選択肢になります。食べる量も「少量を楽しむ」という意識が大切です。

食事のタイミングも重要:空腹時間が長すぎると血糖値が下がりすぎ、強い空腹感とともに甘いものを過剰に欲してしまうことがあります。また、その後の食事での血糖値の急上昇も招きやすくなります。1日3食、できるだけ規則正しい時間に食事を摂ることを心がけ、極端な空腹状態を作らないようにしましょう。間食をする場合も、上記の「質のよい甘味」やナッツなどを少量摂るのがおすすめです。

2.生活習慣を見直す

質の高い睡眠を最優先に:睡眠不足が甘いもの欲求を増幅させることは前述の通りです。毎日7時間程度の睡眠を目安に、寝る1~2時間前からはスマートフォンやパソコンの画面を見ない、カフェインを避ける、寝室の環境(温度、湿度、光、音)を整えるなど、質の高い睡眠をとるための工夫をしましょう。

適度な運動で気分もからだもリフレッシュ:運動は、ストレス解消、血行促進、血糖値の安定、気分転換など、さまざまな面で甘いもの欲求のコントロールに役立ちます。激しい運動である必要はありません。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動や、ヨガ、ストレッチなどを、週に数回、無理のない範囲で取り入れましょう。食後に軽い散歩をするのも効果的です。

自分に合ったストレスケア法を見つける:ストレスを感じたときに甘いものに頼るのではなく、自分なりのヘルシーなストレス解消法をいくつか持っておきましょう。深呼吸や瞑想をする、ゆっくりお風呂に入る、好きな音楽を聴く、アロマテラピーを楽しむ、自然の中を散歩する、友人や家族と話す、趣味に没頭するなど、自分が心からリラックスできること、気分転換になることを見つけて実践しましょう。

「本当に食べたい?」と問いかける習慣:甘いものが無性に食べたくなったとき、すぐに手を伸ばす前に、一瞬立ち止まって自分の心とからだに問いかけてみてください。「今、本当におなかが空いている?」「疲れているだけ?」「何か嫌なことがあった?」「ただ口寂しいだけ?」など、欲求の裏にある本当の原因を探ることで、衝動的な行動を抑えやすくなります。

原因がわかれば、「少し休憩しよう」「温かいお茶を飲んでみよう」「気分転換に散歩しよう」など、甘いものを食べる以外の対処法が見つかるかもしれません。

これらのセルフケアは、すぐに劇的な効果が出るものではないかもしれませんが、継続することで確実にからだと心の状態は変化していきます。完璧を目指さず、焦らず、できることから少しずつ取り入れていくことが成功の秘訣です。

甘いもの依存には漢方薬もおすすめ

セルフケアを色々試してみても、なかなか甘いものへの強い欲求から抜け出せない……。そんなときには、体質そのものに働きかける「漢方薬」が助けになるかもしれません。

漢方治療は、単に「甘いものを食べたくなくさせる」ために薬を使うわけではありません。なぜあなたが甘いものを過剰に欲してしまうのか、その根本にある心とからだのアンバランスを見極め、それを整えることで甘いもの依存の解消を目指します。

おすすめの漢方薬

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、六君子湯(りっくんしとう)など: 疲れやすくエネルギー不足が原因で甘いものを欲している方におすすめ。胃腸の働きを助け、エネルギーをしっかりと作り出せるようにサポートする漢方薬です。

加味逍遙散(かみしょうようさん)、抑肝散(よくかんさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)など: ストレスが溜まって、そのはけ口として甘いものを求めてしまう方におすすめ。気の巡りをスムーズにし、精神的な緊張を和らげる漢方薬です。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、人参養栄湯(にんじんようえいとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)など: からだに必要な栄養や潤いが不足していて、それを補うかのように甘いものを欲している方におすすめ。血や潤いを補う漢方薬です。

「どこに相談したらいいかわからない」「病院に行く時間がない」という方には、最近注目されているオンライン漢方相談サービス「あんしん漢方」などを利用するのもひとつの方法です。スマートフォンやパソコンを使って、自宅にいながら経験豊富な漢方の専門家(医師や薬剤師)に相談できます。丁寧な問診を通して、あなたの体質に合った漢方薬の提案や、食事・生活習慣に関するパーソナルなアドバイスを受けることができるので、忙しい方や、まずは気軽に専門家の意見を聞いてみたいという方におすすめです。