インターネット動画サイトから、“詩吟・和楽器とロックバンドを融合させた、新感覚ロックエンタテインメントバンド”として飛び出した和楽器バンド。今年は海外公演を大成功させ、リオオリンピックのテレビ東京系中継テーマソングに「起死回生」が起用されるなど、その人気は更に絶大なものになっています。
そんな和楽器バンドやプログレッシブ・ロックバンドm.a:ture等でご活躍中の桜村眞さんが『ウレぴあ総研』初登場! ご自身のマルチなご活動と“ものづくり”への思いについてたっぷり語っていただきました。
「自分のことをギタリストだと思ってない」という発言の真意とは?! 今をときめくアーティストの濃密パーソナルインタビューです。
“ギタリスト”ではなく、自称“便利屋さん”なんです
——『ウレぴあ総研』初登場の桜村さん。和楽器バンドは今飛ぶ鳥を落とす勢いで大人気ですね。本日はバンドのことからギターのことまでいろいろと伺わせてください。
桜村:いやーでも僕、自分がギタリストであるとあんまり思っていないんですよね。
——いきなり衝撃発言ですね……!
桜村:(笑)。やっぱり活動の中心はギタリストとして参加している和楽器バンドなんですが、m:a.tureというバンドでギターヴォーカルもやっているし、その他いろいろなプロジェクトにも参加して、楽曲提供、編曲、プロデュース等々もやっています。
だから意外とギタリストであることにこだわりがなくて。変な話、ある日突然サックス奏者にならなきゃいけなくなっても、それはそれで構わないと思っています(笑)。もちろんそれで良い作品ができるなら、という場合のみですけども。
——確かに、更に桜村さんは作曲家であり、作詞家であり、アレンジャーであり、m:a.tureではデザインやアートワークを担当するデザイナーとしての顔もお持ちですよね。最近では『月刊シリーズ』でカメラマンが驚くほど堂々とモデルをこなされていましたし、活動が本当に多岐にわたるので、“ギタリスト”という表現は正しくないのかもしれませんね。
桜村:人は誰かに憧れた瞬間にその人を超えられなくなってしまうので、特定の誰かを意識しないようにしてるというのもあるんですが、僕は「憧れのギターヒーロー」みたいな人も特にいないんですよ。
もともと小さい頃から絵を描くことが好きだったし、以前写真屋さんでバイトしてたことがあるので、PhotoshopやIllustratorでいろいろと作ることもできます。物を作ることが基本的にすごく好きなんです。
一応特化してるのは音楽なんですが、音楽っていうのも突き詰めると表現の手段のひとつでしかなくて。絵でも書でも、その場面で一番良いと思える創作物が作れるなら、音楽以外の表現方法をとることにも全然抵抗がありません。
より良い“ものづくり”がしたいっていうのが根底にあって、その上で音楽ってジャンルをたまたまやっていて、たまたまギターを弾くことが多い、っていう感覚です。だから“ミュージシャン”よりも“アーティスト”のほうが個人的にはしっくりきます。もっと言うと、自称“便利屋さん”ですね。
——“ギタリスト”ではなく“便利屋さん”ですか。
桜村:本当になんでもやりますよ。例えばレコーディングのなかで、楽曲に応じてギター、ベース、ドラム等々のパートを重ねていく所謂“トラッキング”と言われる作業があるんですが、僕大体全部の楽器を自分で弾けちゃうんですよ。
——すごいですね。PCのソフトの打ち込みで、ドラムからストリングスからブラスから全部作れてしまう人って最近多いですけど、全部弾けちゃう人ってなかなかいないですよ。
桜村:いろいろ弾けますよ。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、鍵盤、金管楽器全般、尺八、お琴、三味線、シタール……。シタール知ってますか? インドの弦楽器なんですけど、何かしらの曲のなかで、インドっぽい音がしたら大体シタールです。“ビョ~~ンベンベンビョ~~~~ン”みたいな音がする(笑)。
——文で伝わるかはいささか疑問です(笑)。でも、近年は打ち込みの性能がものすごく良くて、楽器によってはプロですら生と打ち込みの差が分からないなんて言われるご時勢ですよね。なんで全ての楽器をちゃんとマスターしようと思われたんですか?
桜村:確かに、今打ち込みの音源の質はものすごく良いです。でも、編曲したりトラッキングする上で、打ち込みの音源の質+それぞれの楽器に対する理解度が必要だと思ったんですよね。
例えばトランペットだったら「このメロディでは右手の運指が物理的に無理」だとか、「トランペットにこのキーは合わない」だとか。その理解度を高める為に、僕は全部の楽器を基礎からやるということをしました。