村上:赤ちゃんが適度に日光に当たると紫外線の働きでビタミンDが作られます。ビタミンDは骨を作るのに必要ですし、免疫力が高まることも注目されています。
社会性の発達にも良さそうですが、何カ月に何分出かけると発達に差がみられる、といった医学的データはないと思います。この点についてはママの身体やメンタルと同様、人それぞれでしょうね。
――ママにも赤ちゃんにも「個人差」があるんですね。ママと赤ちゃんの数だけ、子育ても千差万別ということでしょうか。
村上:そのとおりです。
でも最近は“マニュアル”が欲しい人が、とても多いんですよね。“答えだけ”を求められるんです。
お出かけの話になると「では月齢何カ月は何時間なら大丈夫なんでしょうか」「どこまでだったら良いですか」って聞かれます。「TDLは、いつならいいのか」とか。
おそらく、ママのこれまでの経験として、テストの解答であったり、仕事の企画運営だったり、一つの答えが決まっている、段取りを決めればその通り進む、ということしかなかったのかと思います。
自分の身体を意識したことがない。人から言われるがままで、自分の意思で自分の身体を使ってこなかったというか。
また、ネットで調べた変な情報は詳しいのに、基本的な知識がない、というバランスの悪さを感じることもあります。妊娠や出産、産後のことだけでなく、月経、避妊など、リプロダクション(生殖)全般にいえることなんですけどね。
――“マニュアル”や“答え”を求めたり、そのために膨大な“情報”を集めたりしながら、その一方でリアルな知識や感覚が不足していて自分が選ぶ道を見失ってしまっている……もしかすると「公共の場での授乳」問題とも、根っこの部分でつながっているのかもしれません。
村上:だからこそ今、公共の場で「授乳する」or「しない」ではない「第三の選択肢」が必要なのではないでしょうか。
公共の場で「授乳する」or「しない」ではない「第三の選択肢」を探してみて!
村上:子育ては、個人にとってキョーレツな印象が残るので、おばあちゃまや先輩ママが厳しい意見を出すこともありますよね。「自分の時はこうだったの!」って固執しがちというか。
ほかにも芸能人の方々が、間違った情報を広く発信してしまうこともありますし……。
そういった、上の世代の個人的な偏った答えや、誤ったインフォメーションのせいで、ますます生(ナマ)の情報から遠ざかってしまう。
ほかにも気になることとして、女性しかいない場でも、授乳ができないお母さんが増えているようにも感じています。
産婦人科医として、母乳相談や赤ちゃんとママの集まりなどに伺うのですが、そういう場所でこちらが「自由に授乳してくださいね」と言っても、グズった赤ちゃんを抱っこして立ち上がって、歩き回ってなだめるママが少なくないんですよ。
さんざん粘って赤ちゃんが大泣きしてから、ようやく授乳を始めるけれど、ケープを出したり、隅っこで後ろを向いたり、もう大変な感じです。
母乳はわざわざ作る手間がなく、すぐにあげられるのに。
むしろ、ミルクを持ってきている人のほうが、段取りよくサッと出して飲ませて、赤ちゃんも静かです。
恥ずかしいと感じているのか、はたまた赤ちゃんが欲しい時に準備不要で即あげられる“楽ちん母乳育児”のメリットを知らないのか……これは私にも分からないのですが、この数年でしょうか、こんな感じのお母さんが多いですね。