Photo:小境勝巳

実は前作にも入れる予定だったハードコアサウンド

── 『ねえみんな大好きだよ』冒頭のハードコア2曲(『DO YOU LIKE ME』『SKOOL PILL』)は、これまでの銀杏BOYZのパンクナンバーよりも激しくて速い印象を受けました。

峯田 そうかもね。さっき言ったハードコアへの恩返しみたいな意味も強い2曲だし。

またさ、これはオリジナルメンバーとの話になるけど、実は前作『光のなかに立っていてね』にもハードコアを入れる予定だったんだ。2011年頃、メンバーみんなでハードコアで盛り上がってて「次のアルバムには絶対入れよう」って話してたの。

2011年は東日本大震災があったでしょ。ちょうどあの震災が起きた3月11日にメンバー全員でさ、あるアメリカのハードコアバンドの東京公演を観に行く予定だったの。そのバンドはギターがものすごいうるさくて、シューゲイザーみたいな感じのハードコア。とんでもなくカッコ良かったんだよ、音が。

それでライブのチケットを取って楽しみにしてたんだけど、当日はあの地震で中止になっちゃって。東京の公演は行けなくなっちゃったんだよね。翌々日の3月13日に岡崎公演があって「中部のほうは安全だから」ってことで、日本全体が混乱している時期ではあったんだけど、チンくん(元ギター)と村井くん(元ドラム)の2人は「どうしても観に行く」っつって、結局車に乗ってそのハードコアバンドを観に岡崎まで行ったらしいよ。車で大渋滞にハマりながらね。

ライブ会場に着いたら、チンくんと村井くん、お客さんから「あれ? 銀杏じゃない?」みたいに声をかけられて、結局打ち上げにまで参加して帰ってきたらしいけどね(笑)。

── でも、そこまでハードコアに突き動かされていた時期があったとは知りませんでした。

峯田 この頃さ、チンくんがムチャクチャな数のエフェクターを使ってる写真が残ってるけど、それもハードコアの影響。「どういうエフェクターを使ってるんだろう」みたいなことを知るために、岡崎まで行ったところもあったみたい。

それくらいハードコアとかノイズにハマってた時期なんだけど、ただ、この翌年の2012年にチンくんがバンドから離脱して。だから、前のアルバムには入れられなかったの。だからこそ「次のアルバムではハードコアを絶対やりたい」っていう思いも強くあって。それで実現させたっていう。

Photo:小境勝巳

ギターのチューニングを合わせずミニアンプで録った

── これまでの経緯を聞くと、『SKOOL PILL』の歌詞の意味も少しだけわかります。『SKOOL PILL』は、激しいハードコアサウンドなのに、歌詞が高校生の日記みたいになっています。この意味が最初はちょっとわからなかったので。

峯田 42歳にもなるいい大人が書く歌詞ではないよね(笑)。でも、しょうがない。あの森くんとパンクバンドをやった当時の僕だったら、日記にこういうことを書いていたと思うし。

── その「森さん」とのエピソードも歌詞に出てきます(笑)。

峯田 森くんに許諾とかは特に取ってないけどね(笑)。まぁ「きっと許してくれるだろうな、森くんなら」とか思って書いた。

また、この曲はね、音もあえて大人っぽくない感じにしたくて。ギターのチューニングを合わせないまま、ミニアンプでギターを鳴らしたのを録ったの。

── そうだったんですか。そんなミニマムな音には聴こえないですけど。

峯田 これも高校生だった当時の感じにしたかったからだけど、でも、ものすごい音が鳴ってると思うな。あの森くんとのバンドのライブみたいな(笑)。

※次回へつづく

●全11回インタビュー:各回更新!

リリース情報

銀杏BOYZ ニュー・アルバム『ねえみんな大好きだよ』

【初回盤】
【通常盤】

10月21日(水)発売
品番:SKOOL-049 価格:3,300円+税

収録曲(全11曲)
01.DO YOU LIKE ME
02.SKOOL PILL
03.大人全滅
04.アーメン・ザーメン・メリーチェイン
05.骨
06.エンジェルベイビー
07.恋は永遠 feat.YUKI
08.いちごの唄 long long cake mix
09.生きたい
10.GOD SAVE THE わーるど
11.アレックス

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・デコ有限会社を設立。 出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタテインメント、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある。