第21回東京フィルメックス特別招待作品の一部

20年続く映画祭だけに“しがらみ”が生まれたりはしないのか?

「常連監督だから、ということではなくて毎回、ちゃんと作品を観た上で良いものであれば上映したいと思っています。だから、この監督の中ではいまひとつだなと思えば上映しないこともあるんですけど、今年の作品はどれも上映するべきだと思うものでした。

逆にコンペティション部門はフィルメックス初の監督の作品が多くてフレッシュな顔ぶれになったんですけど、それも結果としてそうなっただけです」

映画祭が20年続き、世界の名だたる映画作家たちとコネクションができることで良いこともあるが、“しがらみ”も生まれたりはしないのだろうか?

「監督と映画祭とのつながりがあるから上映されているな、と観客の方に思われるようなことがあったら、映画祭の信用がなくなってしまうので、そこはクオリティのあるものを上映してきました。フィルメックスの場合はそもそも日数も限られていて、選べる本数に限りがあるので“しがらみ”の入る余地がないんです(笑)。

上映する枠がもっとたくさんあれば『これはいまいちだけど上映しておくか』みたいなこともあるのかもしれないですけど、フィルメックスは本数が少ないので変な映画が1本でも入ってたら目立つんです(笑)。そこは妥協できない部分ですよね。

今年は本当に力のある作品が揃っているので、コロナになったりはしているのですがパワーダウンはまったくしていないですし、世界の様々な問題を扱っている作品が揃っています。

アゼルバイジャンとアルメニアが戦闘状態になりましたけど、今年のフィルメックスは両方の国の映画(アゼルバイジャン=メキシコ=米の『死ぬ間際』と、仏=アルメニア=ベルギーの『風が吹けば』がどちらもコンペティション部門で上映)が上映されるんですよ。

それにアルメニアの映画はまさに今回の火種になっているナゴルノカラバフ地区の話なんです。映画の舞台は1990年代ですけど、描かれていることが今に結びついている。

このような問題はコロナに関係なく起きていますし、まさにいま直面している問題を扱った映画だけを取り上げるつもりはないですけど、何年か経ってみると、“あの時だからあの映画が上映されたんだな”と思うことがあると思います」