配信上映拡大も、映画祭の意義は“会場に集まる”こと
東京フィルメックスは20余年の間に変化を続け、ネット配信やVR映画など、映画制作や視聴環境の変化に柔軟に対応してきた。
「今年は諸事情でできないんですけど、VR作品は面白いものがどんどん出てきているので今後もやっていきたいと思っています。クラシカルなタイプの作品しか上映しないとなると、映画祭がつまらなくなっていく。ベルリンとかヴェネチアだとテレビシリーズを上映することもあるんですよ。だから今後も面白いものがあれば上映するということになっていくと思います。
映画祭もやはり同じことをずっとやっていても面白くないというのはあります(笑)。いつも新しいことをやっていきたいですし、試行錯誤しながらやってみたけど続かないとか、これは続いたとかあると思うんですね。
今年3月、フィルメックスを京都でもやったんですけど、満席になる回もあって、これからもやっていきたいと思っています。それと今年からリモートで上映することもやってみたいと思っています。コロナで一部の会場のキャパが半分になるのと、地方から東京に来られない人も多いと思うので、許可の出た作品だけの上映にはなるんですけど、地方にいてもフィルメックスの作品を観てもらえる。
この話は去年あたりから話は出ていたんですけど、去年までだと海賊版の問題も含めていろんなところから反対されたと思うんですよ。
ところが今年はコロナのためにいろんな映画祭がリモートで開催して、そんなに海賊版が出回ったりすることはないことがわかったんで、今回の上映作品でもセキュリティのちゃんとしたサーバーで上映すると説明すると、ヨーロッパのエージェントはOKしてくれる。去年までだったら、ここまでのOKは出なかったと思います。
もちろん、リアルな映画祭の開催は究極的な目的ではあるんですけど、映画祭に来られない人にも作品を届ける努力をしなきゃいけないし、コロナのために配信ができることがわかったので、来年以降も続けたいなと思ってます。とは言え、最終的には映画祭は同じ場所にみんなが集まることに意義があるので、呼べるのであれば全員呼びたい。そこは変わらないです」
フィルメックスの魅力は会期や会場数をいたずらに拡大することなく、厳選された作品を観客も審査員もゲストも同じ会場で観て、ロビーで映画人たちが自然に交流し、そこから新たな作品が生まれたり、未来の映画作家が育つ土壌をつくってきた。
そして今年も秋に東京フィルメックスはこれまで以上に豪華な作品を揃えて会場で開催される。そして配信を通じてさらに映画祭への参加者を増やそうとしている。映画の現在と未来が見える映画祭は今年も大きな盛り上がりを見せそうだ。
「第21回東京フィルメックス」
10月30日(金)から11月7日(土)までと11月22日(日)
TOHOシネマズ シャンテ/ヒューマントラストシネマ有楽町/有楽町朝日ホールほか