3月12日(金)から3月30日(火)までの19日間、上野の森美術館にて『VOCA展2021現代美術の展望ー新しい平面の作家たち』が開催される。
『VOCA展』は現代アートにおける平面の領域で、国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に1994年より開催されている美術展。
日頃から公平な立場で作家たちと接している全国の美術館学芸員、研究者、ジャーナリストなどから推薦委員を選出し、それぞれ40歳以下の作家1名(組)を推薦。
また、推薦された作家全員に展覧会への出品を依頼し、全国各地の優れた才能を紹介している。
これまで、福田美蘭(1994年VOCA賞)、やなぎみわ(1999年VOCA賞)、蜷川実花(2006年大原美術館賞)、清川あさみ(2010年佳作賞)など、多方面で活躍する作家たち延べ951人(組)が出品してきた。
『VOCA展2021』では、これからの活躍を期待される新進気鋭の作家30人(組)が出品。
この中から、グランプリとなるVOCA賞に秋田県在住(群馬県出身)尾花賢一の《上野山コスモロジー》が決定したほか、VOCA奨励賞に鄭梨愛、水戸部七絵、VOCA佳作賞に岡本秀、弓指寛治の作品が選ばれ、大原美術館賞には岡本秀の作品が同美術館の選考を経て選出された。
なお、第1回開催から『VOCA展』を協賛している第一生命保険株式会社は、収蔵しているVOCA賞の作品を本社1階にあるロビーでの展示や、第一生命ギャラリーで定期的に公開している。
さらに、全受賞者に対して、同ギャラリーを個展の会場として提供。
『VOCA展2021』の会期を含む3月1日(月)~12月30日(木)まで、『VOCA展2020』で受賞したNerholや、菅実花の作品を含む、これまでのVOCA作家の受賞作品や近作を展示する『VOCA受賞作家展「TOKYO☆VOCAII」』が第一生命ロビーにて開催されるので、こちらも併せて注目してほしい。
◆VOCA賞受賞者 尾花 賢一
作品に取り掛かる際、会場となる『場所』について思考を深めることから始めます。
北関東出身の私にとって、上野は東京の玄関口。幼少の頃、初めて美術に触れたのもこの場所でした。この作品では明るさや暗がりが混在する上野の山を、家族と散策した記憶を思い出しながら絵筆を進めました。
過去と現在を反芻し、場所のレイヤーを捉え直す。不思議な経緯で辿り着いた作品が、このような賞を頂くことができ大変嬉しく思っております。
◆今井 朋(アーツ前橋)・推薦委員の(会場における本作品鑑賞の手引き)
上野という場所は、美術の権力化にも大衆化にも同時に加担し続けてきた。名作が展示されもするし、団体展のような市民の発表の場でもある。
さらに尾花は、道端で商売をする似顔絵描きや標識などに描かれたグラフィティへも表現としての敬意を示す。
動物園のパンダと公園内で来場者がこぼしていった餌を探し求める都会の野生動物など人間の恣意的なものさしによって生まれる現代社会における存在の貴卑へ本作は疑問を投げかける。