ママにできることは意外にシンプル!それでも苦しくなってしまったら?

――ママが「赤ちゃんはこうあるべき」「お世話をする大人はこうあるべき」にがんじがらめにならず、どんな時も、もちろんお出かけの時も、ただ「赤ちゃんのニーズ」に寄り添うということでしょうか。

竹中:ママは、お出かけしたい時も、またせざるを得ない時も「赤ちゃん」のニーズをよく見てあげて。

よく見て、なんていうと何だかすごーく大変そうに思えるかもしれませんが、授乳して欲しければ赤ちゃんはすぐに欲しそうな様子を見せますから(笑)その要求にできるだけ合わせてあげたらいいのです。

「できるだけ」ですよ。授乳は一人じゃできません。赤ちゃんとママと両方の合意がないと成り立たない行為なのですから、ママの無理のない範囲でいいのです。

「授乳服」や「授乳ケープ」などを活用してもいいでしょうし、「スリング」や「ストール」で隠してもいい。

そしてもうひとつのポイントは、しっかり授乳タイムを取れないような場では「ごまかす」ことを覚えることです。先ほどの話のように、おっぱいを飲みたくて泣き始めた完全母乳の赤ちゃんだって、短時間なら抱っこされてあやされて、ごまかすことができます。

よく「赤ちゃんに泣かれると、母乳が出ない僕じゃどうしようもないから預かれないよ」という新米パパがいますが、「そうでもない」ってベテランパパやベテランおばあちゃんは、みんな知っていますよね(笑)

抱っこして歩き出したり、お外を見せたりお話をしたり、歌を歌ってゆすってあげたり。

空腹の赤ちゃんでも、多少の時間は「ごまかす」ことができる。

最近は電話相談で「『あやす』ってどうやるんですか?」と聞かれるような時代ですが、昔の人は、たぶんごく普通に母乳の赤ちゃんをそうして育てていたのだと思います。

時間や場所に“制限”のある枠組みについては「赤ちゃんのニーズ」または「ママのニーズ」に合った時、有り難く利用させてもらいましょう。いろいろな“制限”で思うようにならないのではないか、そんな不安を感じる時には?

「人の手」を借りる。そして「ごまかす」ことを覚える(笑)

この2つはですねぇ、親の必須技かも!くらい重要ですよ。

そもそも“赤ちゃんのお弁当”でもあるママが、たった一人で空腹の赤ちゃんと常に向き合おうとするから、ごまかしが効かずに苦しくなるのです。

ママひとりで赤ちゃんとお出かけするのが難しいと感じた時は、パートナーや家族や、お友だちに声をかけてみましょう。

地域の育児サークルでもいい。特に子どもは子どもが来るとじっと見ますよね。まだ一緒に遊べない時期の赤ちゃんでも、ほかに子どもがいると飽きないし、ごまかせる面があるんですね。

「一時保育」の利用や、乳頭混乱を防ぐ「コップ授乳」「スプーン授乳」についても同じ考え方をしてもらえたらと思うのですが、それは別の回のインタビューで、コツも含めてご説明させていただくとして。

孤独に思い詰めないで、ぜひとも「人」を頼ってみて。

誰よりも大切な「赤ちゃん」のニーズに、ただただ寄り添って、便利なグッズも活用しながら、授乳室などの枠組みは自分たちが便利な時だけ利用させてもらって、困ったら自分だけで頑張ろうとしないで、人の手を借りる。

そして、究極の合言葉は「ごまかす」(笑)

いっぱい考えちゃうと、ものすごく難しい問題のように思えてきちゃいますが、ママにできることって、意外にシンプルなのではないでしょうか。

それでも、もしかすると誰にも相談できないで悩んでしまうことも、時にはありますよね。そんな時には【母乳110番】にお電話ください。私たちが、応援していますよ~!

記事企画・協力:光畑 由佳

【取材協力】竹中 恭子(たけなか きょうこ)氏 プロフィール

母乳110番】代表・電話相談員。イラストレイター・ライター。1男1女の母。『おっぱいとだっこ』『おっぱいとごはん』『家族のための〈おっぱいとだっこ〉』の母乳育児3部作ほか、著書・共著多数。

『おっぱいとだっこ』は第9回ライターズネットワーク大賞受賞。2016年には電子化もされ、海外でも好評を博している(電子書籍版『おっぱいとだっこ』)。近年は水彩画家「武蔵野つきこ」として『授乳美人』作品シリーズも発表。 公式ブログも。

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。