ママがトラブルを起こすのは当たり前?今の「子育て世代」が直面する問題とは
竹中:実は、25年間の電話相談の中で一番驚いたご相談は、
「うちの子のおしっこ、青くないんです!黄色いんです!」というものでした。
そう、おむつのテレビCMで見ると青いですからね。「色が違う。うちの子はオカシイんじゃないか!」と思って、真剣に悩んで電話をくださいました。
「だって自分たちのおしっこも黄色いでしょう?大丈夫ですよ。あれは排泄物をリアルに見せるのはマズイということで青くしてあるだけですから」と説明すると「あぁ、安心しました」と。そういう方が冗談抜きに、何人かいらっしゃいました。
でも、無理もないんです。今はテレビでしか赤ちゃんを見たことがなくて、生の赤ちゃんと触れ合う機会もなく親になってしまう人がほとんど。その意味では今の「子育て世代」は初心者だらけで、ベテランが極端に不足している業界のようなものです。
例えばレストランだって、サービスする店員にベテランが全然いなくて初心者ばかりだったら、テーブルへの案内も注文もスムーズにいかないし、グラスを倒したりの失敗も多々起こりかねないでしょう?
その意味では、子育て初心者ともいうべきママたちに、トラブルがあったとしても当然かもしれないのです。
さらに育児の場合、今は出産する子どもの数が少ないから経験値が少ない上に、せっかくの経験も伝授されにくい。
1人目がある程度育って、または2人目を産んでやっと慣れたと思った頃には乳幼児を抱えたドタバタ期は終わるし、小学校時代、思春期と子育ては次の問題が山積み。育てた経験があったって、アッという間に忘れてしまうんですよね。
――ママたちの多くは「子育て初心者」で、ビギナーを脱却する頃には乳幼児期は終わり、無我夢中で次のステップへ……。
そのように考えてみると、世の赤ちゃん連れが「子育て初心者」ばかりになるのも、なるべくしてなったことなのかもしれませんね。
竹中:そして、見落とせない問題がもうひとつあります。もしかしたら、ママが子育て初心者であることより「公共の場での授乳」に関していえば、もっと大きな問題が。
赤ちゃんや子どもに戸惑う大人が増えている?ママと社会がぶつかる理由
竹中:今は親だけではなく、周りの人たち、つまり社会全体も「子ども慣れしていない」という点です。
ネットで見た体験マンガなのですが、
「自分が独身の頃は『あのママ、バギーを荷物キャリーに使ってる。子どもを乗せればいいのに』と思っていたけれど、親になってよく分かった。子どもは数メートル乗ると『降りる』と騒ぎ、5分たつとまた『乗る~』と暴れる生き物なんだなって」
これは「子育てあるある」というか、子どもが身近にいる人なら分かる話のひとつですが、いない人には理解しにくい話です。
それから、学者の先生の解説だったでしょうか、
「病気や障害があるわけではない普通の小学校3~4年くらいの子どもが電車の中で騒いでいたら、親のしつけが悪いと責められても当然だと思います。
でも、それが2~3才の子だったら少し話が違ってきませんか?乳幼児でまだ言っても判らない年齢の子をなだめている親に怒っても仕方ないので電車で一緒になった人たちは我慢するでしょうし、『お母さんも大変だな』と思う人もいるかもしれません」
というコメントがありました。これを読んだ時は「あぁ、今はこんなことまで説明しないと分からないんだ」と思いました。
とはいえ自分も独身の時を振り返ってみると「乳幼児は言葉が通じない上に動物的」ということも知らなかったし、子ども連れのことは赤ちゃんだろうと大きめの子だろうと、単に「子連れ」とひとくくりにし「迷惑だな」と思っていたんですよね。
そうやって考えてきてみると、今は「社会が『子ども』を知らな過ぎる」時代ともいえるのかな、と。
そして「子ども慣れしていない人が子どもを連れて外出し、周りにいる人たちも子ども慣れしていない。そのためトラブルが発生しやすい状況」になってしまっているのではないかと思います。
――子育てに必死になるママと、周りの人たちの距離感が途方もなく遠いなぁと感じることもあります。当事者にしか理解してもらえないあたりが、しんどいと思うこともあったりして。
竹中:それが、そうともいえないというお話もしましょうか。そしておそらく、そこを解決できれば、みんなが幸せになれるんじゃないかな。