みんなが笑顔になれる社会を目指して!制度も上手に利用してみて

竹中:赤ちゃんを連れたママやパパ、そして彼らを取り巻く「社会」を変えるきっかけ作りに活用できそうだな、と思ったのが、横浜市などの地方自治体が制度化している「市民活動保険」です。

以前は、ボランティア活動など好意で子どもを預かって遊ばせる際に「怪我をさせてしまった時どうする」という問題が大きく、実際に訴訟になってニュースになったこともあり、手伝ってもらいたい人に手伝ってもらえない、ママたちを支援したくてもできない状況が多かったんですね。

そのため活動グループが独自にボランティア保険に加入するなどしていたのですが、場所を特定しないといけなかったり、適用となるメンバー全員を登録しないといけなかったりの枠組があり、使いにくいという難点がありました。

繰り返しになりますが「子ども」は予測のつかない動きをしますし、子連れは当日のドタキャンやドタ参加がどうしても多くなり、あらかじめ参加メンバーを特定することが難しいんですよね。

でも近年は、この制度のある市の市民であれば誰でも自動的に「市民活動保険」に加入していて、市が保険会社と契約しているため、個別にどのようにボランティア保険をやり繰りするかといった心配もなく、いつでも誰でも安心してボランティア活動ができるようになっています。

万が一事故が起きてしまったら、日頃のボランティア活動の内容や事故の状況を書面で報告して、要件を満たしていれば保険金が支払われる仕組みです。そこには治療費だけではなく、相手や親に訴えられた場合の訴訟費用なども含まれています。

また市民全員が加入するタイプの「市民活動保険」とは異なりますが、自治体によっては社会福祉協議会を通じて活動グループが申し込むスタイルのものなど、ほかの保険もあります。

このようなシステムが全国の自治体に拡がって活用されるようになれば、地域で「子育て」の経験を伝え、広めてゆく場を設けやすくなるのではないでしょうか。

「子育て初心者」のママにとっては先輩の貴重な経験値を分けてもらえる場になるでしょうし、「子ども」を知らない人たちが本来の「子ども」の姿を理解する入り口となることもできるでしょう。

地道かもしれませんが、そういった集まりが、少しずつ社会を変えてゆくスタートになり得るかもしれません。

やっぱり、笑顔のキーワードは「人」なのです。ママと赤ちゃんと社会が「人」の理解と心でつながれる、そしてみんなが笑顔になれる世界になることを祈っています。

記事企画協力:光畑 由佳

【取材協力】竹中 恭子(たけなか きょうこ)氏 プロフィール

母乳110番】代表・電話相談員。イラストレイター・ライター。1男1女の母。『おっぱいとだっこ』『おっぱいとごはん』『家族のための〈おっぱいとだっこ〉』の母乳育児3部作ほか、著書・共著多数。

『おっぱいとだっこ』は第9回ライターズネットワーク大賞受賞。2016年には電子化もされ、海外でも好評を博している(電子書籍版『おっぱいとだっこ』)。近年は水彩画家「武蔵野つきこ」として『授乳美人』作品シリーズも発表。 公式ブログも。

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。