公演ができること、お客さんがいることは当たり前ではない
―― 同じステージアーツに携わる人間として、加藤さん自身がバーナムに共感するところもありますか?
彼が残した名言で「至高の芸術というものは、人を幸せにすることだ」というものがあります。それはいち表現者としてすごく感銘を受ける言葉です。この作品をやる上でというより、僕が表現者としてこの先もあり続ける上で、忘れてはいけないことだなと肝に銘じました。これを声を大にして言えるバーナムというのは、やっぱり自分の芸術を成し遂げた人なんだなと思う。
実際、彼がそれだけのことをしたというのは歴史が証明していますしね。彼の芸術で救われた人が絶対にいる。我々が目指す、表現者のあるべき姿だと思います。
――ところで、いま世の中的に、100%幕が開くとは言えない状況があります。その中でも加藤さんが新しい舞台に挑むモチベーションは、どこからきているのでしょうか。
それは、その作品に挑戦できるということ、そして楽しみにしてくださっている人がいるということだけで十分ですよ。
たしかに現状、ひとりでも感染者が出てしまったら現場がストップするリスクは常にあります。僕も感染しないよう努力はしますが、絶対大丈夫とは言えません。そういう意味では以前とは状況は変わってしまっていますが、基本的に僕らがやることは同じ。与えられたものと向きあって、作り上げるということだけです。
ただ、去年の自粛期間を経て劇場が再開している今、お客さまがいてくださることのありがたさは、めちゃくちゃ噛みしめています。
それまでも「毎日が千秋楽だと思ってやる」とは言っていましたが、その覚悟がどこかで我々に欠けていた。明日も明後日も公演はあると思い込んでいた。
僕は昨年、出演予定だった『WEST SIDE STORY Season3』が出来なかったことで改めて、絶対ではなかったんだと実感しました。だから一公演一公演にかける思いというのがより強くなり、身が引き締まりました。これは演劇に携わる人、みんながそう思ったんじゃないかな。
さらに言えば、お客さまがいてくれるというのも、実は当たり前じゃなかった。こういう状況の中でもチケットを買って劇場に足を運んでくださった方がいるからこそ、我々が舞台に立てているってことを、本当に噛みしめています。
――そんな中ですが、加藤さんは今年、アーティストデビュー15周年ですね。
そうなんです。本来だったら全国をまわってライブを……と言いたいのですが、なかなかライブハウスでやるのも厳しい現状ですし、お客さまにも無理をしてほしくないので。あまり大掛かりなことはやれないかもしれませんが、その中でもやれる最大限のことはやりたいですね。去年より、前に進める1年にしたいです!
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ミュージカル『BARNUM』
翻訳・作詞:高橋亜子
演出:荻田浩一
出演:
加藤和樹 / 朝夏まなと 矢田悠祐
/ 綿引さやか・フランク莉奈(ダブルキャスト)
/ 内海啓貴 ・原嘉孝(ダブルキャスト)
/ 章平 工藤広夢 斎藤准一郎 泰智 福田えり 咲良 米島史子 廣瀬水美
/ 中尾ミエ
【東京公演】
2021年3月6日(土)~3月23日(火)
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
【兵庫公演】
2021年3月26日(金)~3月28日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【神奈川公演】
2021年4月2日(金)
会場:相模女子大学グリーンホール