ブロードウェイの作曲家フランク・ワイルドホーン(作曲)とジェイソン・ハウランド(編曲)が音楽を、今や日本ミュージカル界の星と言っていい上田一豪が訳詞・演出を、数々の人気ドラマを世に送り出してきた坂口理子が脚本を手掛け、同名の大ヒット漫画をミュージカル化した『四月は君の嘘』。
日米の才能がタッグを組む世界初演作として大きな注目を集めながら、開幕を目前にして全公演が中止となったあの日から2年、ようやく初日を迎える運びとなり、5月6日と7日にゲネプロが行われた。
全公演中止から2年……ついに迎える開幕
テレビアニメや実写映画にもなっているとあって、ストーリーは既に広く知られているところだが、「〇〇の話」と端的にまとめることは意外と難しいことに改めて気付く。
高校生活を描く学園ドラマであると同時に、生死の絡む恋愛劇でもあり、また音楽家の卵たちの青春群像劇であり、もちろん主人公・有馬公生の成長物語でもあり……。そんな重層的な、しかし「複雑」といった印象とは無縁のむしろ「普遍的」なストーリーを、輝くばかりの名曲の数々と抑制の効いた演出が爽やかにまとめ上げる。
特に音楽は、いわゆる“お持ち帰りチューン”がこんなにも揃ったミュージカルはなかなかないと、心が弾むとともに唸らされる出色の素晴らしさだ。
そんな爽やかな舞台に、さらにキラキラと音がするような彩りをもたらしているのがキャスト陣。公生役のふたりは、根っから繊細であるが故に守ってあげたくなる小関裕太、根にはむしろ多少のSっ気があるが今は自暴自棄になっているが故に放っておけない木村達成、といった具合に味わいは異なるが、どちらもしっかり主人公然とした佇まいを見せていたことが印象的。
かをりという強烈なヒロインを擁していても、これはあくまで公生の物語であるという輪郭を、ふたりの真摯な演技がくっきりと浮かび上がらせる。
公生の幼馴染・澤部椿役の唯月ふうかは、せつない恋心を宿して明るく振舞う姿が、その線の細い歌声も手伝って観る者の共感を誘う。
同じく幼馴染の渡亮太役のふたりも、一見チャラいがまっすぐで友達思いな水田航生、お調子者っぽい一面も覗かせる軽妙さが光った寺西拓人と、学園きってのモテ男をそれぞれに好演。
そしてそんなハマリ役ぞろいのキャストの中でも、とりわけ見事だったのが宮園かをり役の生田絵梨花だ。
生まれ持った可憐な容姿と歌声はもうそれだけで、強烈な言動の裏に抱えきれないほどの想いを秘めたかをりを体現するに十分。その上その優れたバランス感覚で、二次元世界のヒロインを、ミュージカル版ならではのキャラクターとして的確に立ち上げてみせた。