ゆあちゃんは強さと危うさが同居しているところが魅力

撮影/須田卓馬

──ストーリーに対して、改めて感想をいただきたいのですが。ホストにハマる萌ちゃん、ゆあちゃんを描いた『萌/ゆあ編』は、どの辺が見どころだと思いますか?

『萌/ゆあ編』は、ゆあちゃんの言葉がとても刺さります。。見どころは……全部?(笑)

──ホストの世界は、まだ10代の齊藤さんには異世界の話だったのではないでしょうか。

そうですね、触れたことのない世界だったので、ホストというお仕事について、事前に色んな動画を見て勉強しました。

やっぱりホストの方々は、高いプロ意識を持って仕事に臨んでいる印象です。萌ちゃんがハマった楓もそうですし。

ゆあちゃんの言葉を借りると「シゴデキ」っていうか、本当にデキるホストの方は、姫(※女性客のこと)のことを考えているんだって思いました。

──『萌/ゆあ編』は、全部が上手くいってハッピーエンドという感じではありませんでした。そこはどう思いました?

ゆあちゃん、萌ちゃんに限らず出てきたキャラクター全員が、手放しでハッピーエンドっていう風にはならなかったですよね。ちょっとウッてくるような、心が苦しくなるようなラストは『明日カノ』ならではだと思います。

でも現実は、少女漫画みたいに上手くいくものではないから、今のリアルをすごく上手く描かれているなって思いました。

──『明日カノ』は本当にすべてがリアルですよね。

あ、さっき見どころは全部って言いましたが、ゆあちゃんが感情をむき出しにしている所が、見どころかもしれません。あとは、萌ちゃんに対して冷める瞬間も見ていてしんどいですが、見てほしいシーンです。

撮影/須田卓馬

──そんな強烈なゆあちゃんになるために、齊藤さんが心がけたことって何ですか?

当たり前のことですが、原作をとにかく読みました。あとは先ほど言いましたが、ホストクラブにまつわる動画を見たりしました。

──どんな動画を見たのでしょうか。

今は動画で、ホスト業界の裏側を話している方もいらっしゃったり、歌舞伎町でインタビューをしているYouTuberさんもいて。そういうの動画をみて、ひたすら勉強しました。

動画とは違いますが、ゆあちゃんは病的な細さなので、ダイエットも頑張りました。今でも続けているんですけど、少しでもゆあちゃんに近づけたらなと思います。

──10代の女の子は不安定ゆえに、何かに依存してしまうことが多いと思います。その気持ちはわかりますか?

わかる部分もあります! 私はお母さんと本当に仲良しなんですが、遠征したときに寂しくなって電話したりするくらいなので、そういうところは依存しているのかもしれないです(笑)。

──ゆあちゃんは、ハルヒに依存しているけど、気持ちではなくお金でつながっているっていうのが読んでて切ないです。

そうなんですよね、結局気持ちじゃなくてお金だから、稼げなくなったらハルヒから切られてしまう。でもオムライスをハルヒに頑張って作っているシーンとか電話を何回も何回もしちゃって、スマホ片手にで寝ずに待っているとか。健気で苦しくなります。

──ああいうふうに電話しちゃう女の子っていますよね。何回も何回も……。

共感する女の子は多いのかなと思います。

──ゆあちゃんの魅力って、結局どんなところだと思いますか?

人間らしさですかね? 人って取り繕って生きていることが多いのかなって思いますが、ゆあちゃんは感情のままに生きていて、そんなところが危うくて、そこが他の人にない魅力だなと思います。

あとは、髪型も服装も、流行っているものではなく、自分の好きなスタイルを貫いて。揺るがないので、自分をもっていてすごいなと思います。

──ゆあちゃんって、強いですよね。

とても強いです。田舎から1人で東京に出てきて、絶対に自分の力で生きて行こうってなっているのがすごい。私だったらいろんな人に頼らないと生きていけないです。

撮影/須田卓馬

──萌ちゃんについてはどう思いますか?

「私は人と違うものを持っている!」と信じつつも、誰かに常にコンプレックスを抱いているところが、あるあるだな~って思います。

──萌ちゃん役の箭内夢菜さんは、どんな方でした?

本当に萌ちゃんが実在していたら、こういう感じなんだろうなと思うくらい、萌ちゃんを演じていらっしゃいました。漫画で見ている萌ちゃんがそのまま漫画からでてきた感じで、すごいです。

箭内さんご本人はとても優しくて、演技の相談にも乗ってくださるので、ついつい頼ってしまうお姉ちゃんのような存在です。

──リナちゃんや雪ちゃんに対してはどうでしょう?

『明日カノ』は章ごとにメインキャラクターが違いますが、私は全章にそれぞれ共感ポイントがありました。もちろん、各キャラクターのすべてに私が当てはまるワケじゃないんですけど、「これはそうだな」って感じる瞬間が多くて。

例えば雪ちゃんが自分の火傷痕についてリナちゃんに話したときに、リナちゃんが「ごめんね! 気付いてあげられなくて本当に辛かったよね!」って言う所。雪ちゃんと同じく私も「あ~」って思いました。そういうのじゃないしって。

──彩さんの反応とは対照的で。

彩さんは雪ちゃんに「あ、それはメッチャ辛いわ」って言うんですよね、これなら確かに救われるなって思いました。刺さりましたね。

──リナちゃんの反応って、ちょっと上からみたいな気がします。

そうです、同じく悲しんで欲しいワケではないんですよね、雪ちゃんは。繊細な女の子の心って、わかる人にはわかるし、刺さる人にはめちゃくちゃ刺さる。そういうところが、『明日カノ』のすごく好きなところです。