自分自身が父親だからこそ、心が動く瞬間があった

左から窪田正孝、山崎育三郎 撮影/奥田耕平

――圭介は交通事故によって妻が意識不明の重態に陥ります。クライマックスの場面は、思わず瞼が熱くなりました。

窪田 あそこの場面はやりづらかったんじゃないかなと思ったの。

山崎 そう?

窪田 というのも、監督はひとつの画角に『ラジハ』メンバーが全員いることにこだわられていて。でも、あそこって圭介にとってはすごくデリケートなシーン。あの繊細な状況で、後ろで技師たちがどういう顔しているんだという物理的な問題もあって、監督にここは自分といっくんだけの世界にしてほしいという話もしました。

でも、やっぱり監督はずっと守ってきた『ラジハ』らしさを大切にされていたので、結果的にああいうシーンになったんですけど、あの難しい中でよくやってくれたなと思います。

左から山崎育三郎、窪田正孝 撮影/奥田耕平

山崎 マサはこういうところがあるんですよ。僕たちゲストのことを考えて、芝居がしやすいように監督にこうした方がいいんじゃないですかということも言ってくれる。それはこちらとしては心強かったし助けられましたね。

窪田 そもそも圭介ってバックボーンがほとんど描かれていないじゃん? たまきさん(山口紗弥加)の地元の後輩というところから入って、いきなり事故が起きて、奥さんがああいう状態になる。そこから「はい、どうぞ」っていきなりあの繊細なシーンをやれと言われてもなかなかできるものじゃないと思う。そこを本当によく圭介の感情をぐっと引き寄せてできたなって。

山崎 確かに連ドラのように積み上げてきたものがない分、ハードルは高かったけど、そこはやっぱり自分自身が父親であることも大きかったと思う。重なるところもあったからこそ集中できたし、心が動く瞬間が何度もありました。