“壁”を感じたら、開き直って距離をとってみる

窪田正孝 撮影/奥田耕平

――映画の中では“壁”という言葉が象徴的に使われていました。お2人は仕事をしていて、どんなときに“壁”を感じますか。

窪田 何だろう。“壁”かあ。何かある?

山崎 自分は20代は舞台しかやってこなくて。29のタイミングでテレビの世界に入ってきたんですけど、そこはやっぱり大きな“壁”だったかもしれないですね。ミュージカルは、2年先3年先までスケジュールが埋まっている世界。それを全部ゼロにして、どうなるかわからない映像の世界に飛び込むのは勇気がいったし、高い“壁”だったと思う。

窪田 そっかあ。僕は何だろう。いつも新しい作品に入るときは“壁”を感じているかもしれない。作品に入る前って結構ストイックになったりするんですよね。現場の雰囲気もわからないし、監督の感じもわからないし。だからいつも衣装合わせのときが一番怖い(笑)。

左から山崎育三郎、窪田正孝 撮影/奥田耕平

――その“壁”をどうやって乗り越えるんでしょうか。

山崎 どうだろう。そうは言いつつも結構行っちゃえみたいなところがあって。テレビの世界に行くと決めたときも、未知のことに対してあんまりネガティブには捉えていなかったんですよね。むしろワクワクするというか。

窪田 それはわかる。やっぱり人生1回きりだし、何でもトライしてみた方がいいっていう感じは僕もある。

山崎 その“壁”があまりにも高かったり、ぶつかり続けるんだったら、逃げればいいって考えるタイプなので。固執する必要はないと思っているんですよ。そこがダメなら他に道を探せばいい。大事なのは、“壁”を越えることじゃなく、その状況を面白がれるかどうか。乗り越えることより楽しめることを重視しているところはありますね。

窪田 僕は開き直っちゃうかも。そもそも“壁”と意識しているものって自分だけの概念だったりするので。視点を変えたり、距離を置いてみると、“壁”と思っていたものが“壁”じゃなかったりすることってあるじゃないですか。

山崎 うん。わかる。

窪田 人に話してみても、もっと深刻なリアクションが返ってくるのかと思ったら、意外と「そんなこと?」みたいに言われたり。開き直って距離を置いてみると、高く見えた“壁”が低く感じたりするんですよね。

山崎育三郎 撮影/奥田耕平

――そうしたある種の客観性は若い頃から備わっていたんでしょうか。

窪田 昔は“壁”なんてものを感じたことすらなかったかもしれない。そんな間もないというか。

山崎 忙しすぎてね。

窪田 とにかくがむしゃらで、来た仕事を打ち返すのに必死。来た球を全部打ち返してやらなきゃダメだっていう意識しかなかったから、何かを考える余裕さえなかった。今も“壁”ということをそこまで意識はしていないです。むしろ“山”って感じ。一歩一歩山道を踏みしめて乗り越えるイメージで仕事に取り組んでいます。

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