無人島で“孤島のプログラム”を行っている設定。役作りで心がけたのは?

――お芝居をする上ではどんなことを心がけられましたか?

磯村 無人島で“孤島のプログラム”を行っている設定で、支給されるものしか食べられないという制限があるので、体重の調整はある程度しました。

あとは、実際に撮影現場には虫が多かったり、前半のシーンでは雨に降られたり、泥まみれにもなったりしたんですけど、そんな過酷な状況も気にならないような精神力を鍛えていくことを意識していました。

宇野 現場に行ってみないとわからないことが多かったのですが、孤島、景色、プレハブ小屋、そこに磯村くん、「副議長」役の北村優衣さん、城定監督、スタッフの皆さんがいて、現場に立ってみて見えてくるものを大事にしたいなと思いました。

――「オペレーター」と「議長」のキャラクターに関してはどのように捉えられて演じられました?

磯村 何かを信仰している人たちのイメージが自分の中にすでにあったので、そこに関しては迷いはありませんでした。

ただ、ずっとニコニコしているわけではないし、“先生”という信じるものがひとつあるのは確かでした。

ほかの2人と「ニコニコ人生センター」という宗教的な団体から与えられた“孤島のプログラム”を一生懸命進めていく信仰心の強さもみたいなものは目に見えないものですからね。

自分の意識の変え方だと思うんですけど、そこはイメージを膨らませて自分でどんどん作っていきました。

――宇野さんが演じられた「議長」は、「オペレーター」と違って、中盤あたりから教祖様の教えを完全には信じていないような行動に出ますよね。

宇野 人が誰しもが持っている弱さやズルさ、不潔な部分だったり嫌な面を拡大して目の前に置かれたような人物で、“孤島のプログラム”で欲を絶つことによって、より純な不潔が浮き彫りになっていったように思います。

撮影中、お互い相手から刺激をもらったこと

『ビリーバーズ』7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開 © 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

――おふたりがここまでガッツリ共演されるのは今回が初めてだったと思うんですけど、撮影中にお互い相手から刺激をもらったり、触発されるようなことはありましたか?

磯村 僕はずっと触発されっ放しでしたね。宇野さんが「議長」役で参加されるって聞いたときもすごく嬉しかったし、ガッツリご一緒させてもらえるのを楽しみにしていたので、現場が毎日楽しくて。

セリフのかけ合いをするシーンは特にそうだったんですけど、宇野さんが本当に「議長」さんだったんですよ(笑)。

宇野 その言い方、(危ない人みたいに)誤解されちゃうじゃない(笑)。

磯村 (爆笑!)でも、それぐらい、宇野さんの演じる「議長」さんがこの世界を一気に引き締めてくださって。

僕ら3人がヘンに迷うこともなく“孤島のプログラム”を遂行できたのも宇野さんのおかげだと思っているぐらい、僕は毎シーン、毎シーン、宇野さんに惚れていました。

『ビリーバーズ』7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開 © 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

宇野 僕の方こそ触発されっ放しでした。

磯村くんとは『前科者』(22)という映画でご一緒したことはあったんですけど、共演シーン自体はほんの一瞬だったんです。

磯村 そうでしたね。

宇野 ただ、撮影が終わった後に少し話す時間があって。すごくいいなと思ったんです。

なんだかずっと前から知り合いのような居心地の良さが磯村くんにはあるんですよ。まさかこんなに早くガッツリやらせてもらえて、しかも初主演の場に立ち会えることがとても嬉しくて。

磯村くんはいま僕のおかげって言ってくれてましたけど、こちらこそ磯村くんに助けられてばかりで、学ぶべきことが沢山ありました。

北村さんを含めた3人で過ごした時間はとても良い時間でした。

磯村 お芝居の話は特にしなくて、その時々のフィーリングで押したり、引いたりしながら、それぞれの役を作っていったので、「議長」「副議長」「オペレーター」は宇野さんと北村さん、自分の3人以外あり得ないって思えるぐらいの空気感がすごくあったんですよね。

どのシーンもそうやって、芝居をみんなで楽しみながら撮っていきました。

――城定監督の演出や現場の印象はいかがでしたか?

磯村 城定さんは本当に映画が大好きなんだなっていうのを現場で感じました。

職人気質ですし、言葉では上手く説明できないんですけと、ワンパクと言うか、子供心を大切に持ちながら撮影を楽しんでいる。

役者ともちゃんと向き合ってくれるし、現場を楽しみながら、新しいアイデアもどんどん生み出していくんですよね。

しかも、ヴィジョンが明確なので、撮るのが速い。だから僕らも信頼できる。そこがすごく素敵だなと思いました。

宇野 天候の問題はありましたが、現場は淡々とあまり状況に左右されることなく臨機応変にスピーディに進んでいったのですが、完成した作品を観たときに、ここの演出はこういうことだったのか!って気づかされることがとても多かったです。

原作からの脚本もそうですが、現場を経て映画が繊細に変化していったように思います。

――役者には細かい演出をされるんですか?

磯村 俳優陣に任せてくれることが多かったですね。カメラの画的なことで動きの指示を出していただくことはありましたけど、基本的には僕らが持っていったものを楽しんでくれている感じでした。

宇野 そうですね。もちろん演出はしていただいているのですが、細かくは言わず、知らない間に城定さんの思い描いているものになっている、演出を感じさせない演出なんです。

だから、スゴいんです。

磯村 そうなんですよね。ただ、これまでに数多くのピンク映画を撮られてきた方なので、濡れ場のシーンは細かくて流れが明確でした。あれは本当に素晴らしかったです。

自然に入れる形作りで演出してくださったので、僕らはまったくストレスや不安はなかったです。