ふたりにとっての映画『ビリーバーズ』の面白さ

――次が最後の質問です。山本直樹さんの漫画のファンの方や原作のコミックを知らない人に、おふたりは映画『ビリーバーズ』の面白さをどのように伝えられますか?

磯村 信仰する力と言いますか、何かを信じる力みたいなものは誰もが持っているものだと思うんですよね。

自分自身を素直に導いていくその力の大切さと、人間本来の欲望みたいなものの支配度の変化には恐らく共感できるものがあると思うし、その間で揺れ動く僕たち3人を見ながら、自分自身に問うこともできると思います。

それに、僕らの住んでいるこの場所がすごく汚れた世界で、3人のいる島がある意味正しい場所なのではと想起させる本作の設定は、とても現代とマッチしていると思うんです。

実際に地球上では今も戦争が起きているし、コロナという未知のウイルスも蔓延している。そんな世界で僕たちはどうやって生きていったらいいのか?っていうところとすごくリンクするんじゃないかと。

そこは『ビリーバーズ』を知らなかった人にも最後に感じ取ってもらえると信じています。

宇野 最近は気の沈むニュースが多く、現実が嫌になります。

でも現実には好きなものや美味しいものなど、ウキウキする事も実は大変多く、僕は生きているだけで不謹慎です。

生きているだけの姿を追い、可笑しくて、普通で、すごく身近な思いが映っているこの『ビリーバーズ』が僕はとても好きです。

背景がいくら暗くても、自分達そのままの姿を観られる映画であると信じています。

<磯村勇斗>ヘアメイク:佐藤友勝(/スタイリスト:齋藤良介

『ビリーバーズ』7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

原作:山本直樹「ビリーバーズ」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
監督・脚本:城定秀夫
配給:クロックワークス+SPOTTED PRODUCTIONS
© 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会 

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。