ディーンが表現する「人間らしさ」とは

ディーン・フジオカ 撮影:奥田耕平

「科学を信じる」ということと同時に、ドラマのひとつのキーワードとなっているのが生と死。事件の中で命を落としていく者がいる。一方で小比類巻は妻の死が受け入れられず、妻の遺体を冷凍保存し、科学の未来に望みを託している。ディーン自身はそんな小比類巻と、生と死と、どのように向き合ったのか。

「医学的には死亡した、という判断が下されている命を延命しようとする努力をしているようには見えないほうがいいな、と思ったんです。何かに対して執念とか、執着みたいなものを持って、自分の弱さゆえにその行動を取っているように見えるのは嫌だな、と。でも、逆に全くないのも嫌だな、と思ったんですよ。それがひとりのキャラクターをポートレートする上で、すごくリアルだな、と。

人間は生きていく上で、何かを得ると何かを失っている。前に進めば、そこで何かを得るけど、選ばなかった機会損失はある。どこかのタイミングでは自分にとっては、ネガティブな選択をしたとしても、その後、それによって得られたことの方が大きかったかもしれない。もしかしたら自分としては正しい選択をしたと思っていても、意外ともっとチャンスがあったのに気づかなかったとか……分からないですよね」

そんな中で、「それでも自分は科学の光の方を信じる、と言っている小比類巻の言葉は、綺麗事とかじゃないし、自分が自分でいるために、どうしても必要であるから、それを選んでいる」と小比類巻を分析する。そして、ドラマの主題歌でディーンが歌う『Apple』のコアになっている部分でもあるという。

「言葉で言うと神と悪魔……そういうとなんか『善と悪』みたいになってしまうからうまく伝わるか分からないんですけど、よくプロコン(Pros & Con)っていうじゃないですか。ひとつのことを考えるときに、プロがあってコンがあって、意外とプラスの面とマイナス面や、その間で揺れている。それでも、自分はこれを選ぶ、という決断を常にし続けている、選び続けてるって、なんだか……一番、生(なま)な部分。そこが楽曲で表現できたらいいな、と。

緊張感であったり、究極の選択みたいなものを、生理現象として体験してもらえたらいいなと思って、楽曲を作りました。なので、ぜひ聴いてください(笑)」

地上波からHuluへと場所を移し、ますます大きいスケールで動いていく物語。ダイナミックさに目を奪われがちだが、その中でも細かな人間の心の揺れも見どころのひとつだ。次々と起こる事件の中で、ひとつの芯を持って佇む小比類巻の姿が作品の「芯」になっているのは間違いない。

Huluオリジナル「パンドラの果実〜科学犯罪捜査ファイル〜」Season2は、Huluで独占配信中

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ディーン・フジオカさんのサイン入りポラ

大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。たれ耳のうさぎと暮らしている。ライブと本があったら生きていける。