優しくて誠実で、穏やかで…道枝は透(主人公)そのもの

『今夜、世界からこの恋が消えても』 ©2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会

冒頭に記したのは、福本演じる真織への思いをあらためて自覚した道枝扮する透が、彼女が待つ水族館へ走って向かう場面で、このシーンは本編の撮影初日に収められたもの。

今作は2022年2月1日にクランクインして、3月8日にクランクアップ。約1カ月の撮影をまさに前を向いて走り抜けることになったが、福本はクランクアップ時にこんなコメントをしている。

「道枝さんは、原作を初めて読んだときにも感じましたが、現場でも透くんそのもので、ご本人が持っている優しさや誠実さがこの役にぴったりでした」。

そう語る福本も芯の強さが真織にぴったりだったと皆語っていたが、道枝は透そのものというのも誰もが口を揃えていたこと。福本の言葉にあるように、優しくて誠実で、穏やかで正直で献身的。その人間性で、意識はしていないのにかわいらしさやカッコ良さがのぞいてしまう。主張はしていないのに人を引きつけてしまう。そんなところもまさに透かもしれない。

『今夜、世界からこの恋が消えても』 ©2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会

そんな様子は、撮影現場でも伺えた。2月1日の撮影初日、走るシーンなどとあわせて撮影されていたのは、透と真織のデートの点描シーン。楽しい日々の積み重ねとして、スケッチ的にスクリーンに映し出されるカットだ。

ニュース記事などでも報じられたとおり、これら点描のデートシーンは台本上には設定と状況しかなく、透と真織としての会話のやりとりはアドリブ。初日から、透と真織そのものであることが求められる撮影ともなった。

八景島シーパラダイスでソフトクリームを買うシーン、ボートやメリーゴーラウンドで遊ぶカットやベンチで話すカットを収めて、場所を移して次に訪れたのが湘南の鵠沼伏見稲荷神社。道枝と福本に対して、三木監督は「透は小さい頃から何度も来ていて、真織は初めて」と設定を聞かせ、基本的な流れを確かめると早速カメラが回り始める。

監督の言葉を基に芝居とセリフを自分なりに組み立てて、透と真織として自然な会話と動きを見せるふたり。また、スマートフォンでお互いに動画を撮影し合いながらのデートという設定で、実際にそれぞれが回した動画も確認した三木監督は、「いいじゃない!」と笑顔を見せた。