若い世代に希望を託しているように感じた
――行き場のない人たちがどんづまりの世界で、それでもあがいて、もがいて、閉塞した状況を突破していこうという姿に、今この時代にこの作品を上映する意義のようなものを感じました。お三方は、この映画が今公開される意義をどう感じていますか。
西島 僕は監督ではないので、作品の意義を語ることは難しいですが、先ほども少し言ったように、自分が安心してこの世界で生きられると感じている人は意外に少ないと思っているんですね。何かあったら人生が終わるような、ちょっとずつ追い込まれている感じをみんなが体感していて。
だから、ここに登場する人物は確かに極端ですけど、誰かに感情移入することはできると思っています。その上で、僕は完成した作品を観たときに、若い世代に希望を託しているように感じました。どうですか。
三浦 あの2人(宮沢氷魚演じる矢島と、玉城ティナ演じる美流)には生き残ってほしいなと思いましたね。僕たちみたいなオッさんはもう知らんわみたいな(笑)。今から世の中を変えることはできないけども、自分たちは好きに生きていくぞっていう希望が見える2人ですよね。
西島 そうなんです。お2人とガソリンスタンドで対峙する場面がとても印象的で。2人ともスタイルも異次元じゃないですか。そんな2人が燃えさかる炎の中、近づいてくるシルエットから、若い世代が上の世代に復讐する意志というものを感じましたね。
斎藤 僕も喫茶店のシーンで2人と一緒になったんですけど、白いレインコートを着て店内に入ってくる矢島と美流の姿に、未来人が古き悪しき時代を絶つじゃないですけど、古い世代に対して明確に引導を渡す瞬間のようなものを感じました。
西島 そういう希望の持ち方みたいなものは、きっとご覧いただいたみなさんと共有できるんじゃないかなと、いち観客として思います。
斎藤 僕はこの映画に対して、現代の映画が自然と避けていくような場所を思い切り描いているなという印象を受けました。たとえるなら、何枚か撮った上でSNSにアップされず削除される写真のような。アップライトの後ろに確実にあるんだけど、人目にふれないという世界がこの映画なのかなと。
そして、それは非常に現代的なんじゃないかと思っています。どのキャラクターにかはわからないですけど、自分の合わせ鏡のように感じる瞬間がきっとある。なかなか宣伝文句が見つかりづらい作品ではありますが、それがこの作品のコクというか、旨みになっている気がします。
三浦 まあ、意義なんてものは出演している僕たちが押しつけるものではないですから。お客様がどう感じるかが一番の正解。それは聞きたいですね、「どう思った?」って。ただ「面白かった」でもいいし、「あのシーンはちょっと…」でもいい。そういう意見は、特に聞きたい映画だったなと思います。