左から斎藤工、西島秀俊、三浦友和 撮影/奥田耕平

男の色気とはなんだろうか。

それは、わかりやすい見た目や年齢に起因しない、もっと別の何かから醸成されているように思えてならない。

公開中の映画『グッバイ・クルエル・ワールド』に出てくる男たちは、みんな色っぽい。決して甘い恋愛映画ではない。むしろ「Cruel World(残酷な世界)」に翻弄され、1人またひとりと羽根をもがれていくような映画だ。でも、その姿さえ色気が漏れ出ている。

暴力と銃声と血飛沫が飛び散るこの狂乱のクライムエンターテインメントを生きた西島秀俊、斎藤工、三浦友和という名優3人と共に、男の色気について考えてみたい。

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この映画と同じようなことが世の中で起こっている

左から斎藤工、西島秀俊、三浦友和 撮影/奥田耕平

――クルエル・ワールドとは直訳すると「残酷な世界」。このタイトルを聞いたとき、率直にどうお感じになりましたか。

三浦 いいタイトルですよね。どなたがつけたんだろう。

斎藤 最初に見たときは、なんて読むんだろうと思いました(笑)。「クルエル」という言葉ってあまり日本人的には馴染みがないと思うんですけど、でもその響きに得体の知れなさがあるというか。

三浦 確かに。日本語より英語の方がいいなと思いました。

斎藤 「狂う」とのダブルミーニングになっているところも魅力を感じますし。

西島 この映画の中で描かれている世界は、普通に生活している人たちからすると、ちょっと想像もつかないような世界なんですけど。やっぱりこういうことってどこかで起きているわけで。僕たちもどこかでこの世界の残酷さみたいなものを感じていて。そのメタファーみたいなものを、映画で描いてるのかなと。

斎藤 ここに出てくる人たちはみんな共通して、手詰まり手前にいる状態。でもそれって、急にそうなったというよりも、じんわりとフェーズが変わって、いつの間にか身動きがとれなくなっていた感じなんですよね。

ある日突然世界が変わったというより、じんわりと選択肢が狭まっていく人たちの物語。それって、立場は違えど、同じようなことが世の中で起こってるのかなという印象は僕も受けました。

西島秀俊 撮影/奥田耕平

――お三方はこの世界は残酷だと思いますか。それとも美しいと思いますか。

三浦 こうした時世のこともあって、特に残酷だと思いますよね。これまでもシリアだったりアフガンだったり、世界のいろんなところで戦争は起きていた。でも、本当はいけないことなんですけど、どこか自分たちとは遠い世界のことだと感じていたところがありました。それが、今はとても身近なものになっている。明日は我が身という状況を目の当たりにしていると、残酷だなと思わざるを得ないですよね。

西島 厳しい世界だなというふうには感じます。僕も含めて、未来に対して希望を持つことがとても難しくなっている。安心して生活できているとは正直言えないので、そういう意味でやっぱりなかなか前向きなことは言えないですよね。

斎藤 僕は残酷さも美しさも両方あると思っています。僕はこの世界の原初的なものに対して、特に美しさを感じていて。逆に、いわゆるデジタルな世界はまだ歴史も浅いし、そこに美しさは見出せていないんですけど。

僕よりずっと年下の方々は、デジタルの世界がリアルの世界と並行に存在していて、ごく自然に美しさを見出している。その感覚は僕にはないものだし、そうやって感性がどんどん移り変わっていくことも含めて、世界は美しいなと思うところはあります。