今、ロンドンのエンタテインメントの勢いがすごい。
1990年代は誰もがハリウッドの世界に魅了され、アメリカに留学したがる人が多かったと記憶している。
私もそのひとりで、アメリカ映画に強いあこがれを抱き、留学をしたクチだが、ここ数年はイギリス発の映画やドラマがおもしろく、クオリティの高さを痛感している。
ミュージカル好きの友人は、「エンタメの舞台はブロードウェイからウエストエンドに移った」とまで断言する。
ロンドン郊外、バスタブ付きの宿でホッとひと息
アイルランドへ行く前はロンドンのヒースロー空港に立ち寄っただけだったが、ヨーロッパ旅行の締めくくりはロンドン市街だ。
イタリアのシチリアを夜に出発したので、ロンドンの空港に降り立ったのは23時過ぎ。そこからタクシーで予約しておいた宿へ向かう。
ヒースローはヨーロッパ最大のハブ空港だが、ロンドンには他にもたくさん空港がある。私たちがイタリアから到着したのはロンドン北部の小さなスタンステッド空港。そこからタクシーで15分ほどの宿に直行した。
宿に着いたのは真夜中過ぎ。周りは数軒の小さな民家や雑貨店しかない場所で、1階がパブ、2階が宿泊施設になっている。イギリスにはパブと宿が一体化した民宿のようなところがたくさんある。
以前、「パブに泊まる」というイギリス人を不思議に思ったことがあったが、それはパブの2階の部屋に泊まるということなのだ。
深夜にも関わらず初老の女性が鍵を開けてくれたその宿は、部屋に暖炉があり、朝食代わりに小さなシリアルの箱とミルク瓶が用意されていた。
けっして高級な宿ではないが、夏のようなシチリアから急に肌寒いロンドンの郊外に放り出された私たちを包むようなぬくもりがあった。
浅いバスタブに熱いお湯を張って娘と交替でつかる。イタリアにはバスタブがなかったので、こんな小さなバスタブがとてもありがたく感じられる。
大都市ロンドンに圧倒される
翌朝、市内に移動した私は、大都会ロンドンにただただ圧倒された。イタリアやアイルランドに比べると、街の規模も人の多さも段違いだ。
まず地下鉄の路線の複雑さに戸惑い、駅舎の大きさに衝撃を受ける。絡み合う赤や緑の地下鉄路線図は、東京都内のそれとよく似ている。きっと市内の地下は東京のように穴だらけなのだろう。
ロンドンの地下鉄はチューブとも呼ばれる。駅のホームに立つと、天井も壁も筒状になっていて、たしかにチューブの中に迷い込んだような錯覚に陥る。
「オイスター」というプリペイドカードを買うと市内や郊外までの地下鉄や列車で利用することができてとても便利なのだが、驚いたのはロンドンで一度も現金を見なかったことだ。
イギリスは2020年にEUを離脱したので通貨はポンド。だが、ロンドン滞在中の3日間、ついに一度もポンド札やコインを目にすることはなかった。
すべてはクレジットカードかスマホ決済。小売店のレジでは「現金不可」の張り紙も時折目にする。便利なのはいいが、自分がいくら使ったのか把握しづらく、後からカードの請求額に驚くことになる。